えだは

モー神通信のTKです。ほんばんは。

モーニング娘。’152015春ツアー『GURADATION』:その1

「偉大なるリーダー」という一言では表現し切れない精神性・唯一性の中核を担ったメンバーが卒業するというのはグループにとっては大きな痛手です。しかしそのダメージが大きいほど、その危機を打開すべく残されたメンバーの一体感は増すもの。過去においては2001年『ザ☆ピ〜ス』の夏がそうでした。初代リーダー・中澤裕子の卒業はグループにとってはその存続が危ぶまれるほどの事態であったと記憶しています。その危機は『ザ☆ピ〜ス』のPV中でも「メンバーが乗った船に襲いかかる嵐」として象徴的に表現されていますね。そしてそのPVの通り、メンバーは力を合わせて嵐を乗り切り さらなる航海へと向かっていったわけです。ドラマチックな展開ではあったものの、やはりそこにはメンバーにもファンサイドにも、危機に瀕した切迫感のようなものはあったと記憶しています。


そういった時期からの連想で私は、今の道重さんが抜けた後のモーニング娘。も団結力は増しているだろうけど、同時にある種の悲壮感や切迫した空気があるのではないかと危惧していたんです。ところがです! ステージを縦横に駆けるメンバーには悲壮感など微塵もなく、ステージ上の青春を謳歌する歓びに溢れ、懐広く新メンバーを迎え入れている余裕すら感じられました。道重さん不在の感傷を私に感じさせることもなく、終始無心に楽しませてくれました。


これは一つには幾度と危機を乗り越えて存続して来たグループの歴史への信頼、その伝統あるグループの一員なんだという自信があるのでしょう。世間から忘れられた時期にもスキルを磨いてサバイブしてきたんですもの。そこらの流行りものみたいにそう簡単に消えたりはしない。そしてもう一つは自分達は道重さんから「皆なら大丈夫」と信頼され、託されたメンバーなんだという自信と誇りがあったのだろうと想像します。その自負が、「私達こそがモーニング娘。なんだ」という堂々たるステージングとなって立ち現れていたように感じました。


演目は申し分なし。まぁ、そもそも今やって拒絶反応が出るような演目ってないですけどね。香音ちゃんや生田、工藤といったソロパートが少なかったメンバーにもそれぞれフィーチャーされる場面増やされていたのも嬉しかったですね。ソロパートはほとんどないながらも12期メンバーも全員曲は基本的にすべて参加しており、複雑なフォーメーションやダンスに果敢に食らいついていました。しかしこんなに先輩全体で新メンバーを迎え入れ育てようとしていた事って今までにもなかったんじゃないかな。





<演目ネタバレ注意>



■『好きな先輩』
元々5期メンバー4人が新加入メンバーだった時にその4人で披露された曲。その後もその時代時代の新メンバーによって何度も歌い継がれてきました。もちろん今回歌うのは12期メンバーの4人。


フリコピをしてみれば特に実感できるかと思いますが、この曲のフリにはかなり体を開く動きがあります。イントロの片手片足を上げるフリなぞは、それこそ歌詞世界からするとやや大仰なくらいです。そして踊ってみれば、体を大きく開きながら萎縮するのはかえって難しいという事に気づきます。身体というものは、私たちが頭で考える以上に感情と直結しているもの。猫背になれば気分は落ち込み、背筋を伸ばせば前向きになれるものです。そしてこの曲にフリをつけた夏まゆみ先生はそのことを誰よりも知っている人。つまりこのフリは夏先生が新メンバーであった5期メンバーの萎縮を解き、客席に向かって心を開かせようとつけたフリだったと思うのです※1。私にはその夏先生の5期へ向けた愛情が、時空を超え、今12期にも注がれているように感じられました。




■『マジですかスカ』
今では最年長メンバーとなった9期メンバーのデビュー曲ですよ。リリース時は最初のAメロをデビューしたての9期メンバーが順番にソロで歌っていたものでした。それが今回のコンサートではAメロ1回目が9期(これは同じ)、Aメロ2回目の繰り返しが10期、Bメロを11・12期で歌い繋ぎ、サビで13人がズラッと横に並んで繰り広げる壮観なラインダンスに突入! という怒涛の展開へと変わっていました。これは、モーニング娘。の多重性とそれが一体となってぶつかって来るカタルシスが同時に感じられて、あるいはリリース当時よりも楽曲に力を感じたかもしれません。実際リリース当時は「とりあえず新加入メンバーに歌い出しで順番にソロパートを与えておくかー」程度の気遣いでしかなかったように思うんですよね※2。それが「新メンが歌い出し」が「最年長が歌い出し」とまったく逆の意味にまでなって、こんな風にグループの姿と積み上げて来た歴史を体現する形に大化けするなんて! こんな感慨はやはり長く存続するグループならではですね。


※1:当時は黄金期に一枚岩となった9人の中に加入した5期メンバーの4人はなかなかグループに馴染めず、萎縮気味だったのが懸念されていた、と記憶しています。


※2:続くシングル『Only You』ではその最低限の気遣いすらなくなって、プラチナ期まで楽曲が後退した印象でしたが…。


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