えだは

モー神通信のTKです。ほんばんは。

小野恵令奈 in 『さんかく』

倦怠期を迎えた同棲中のカップルである百瀬と佳代のの部屋に、佳代の気まぐれな妹・桃が転がり込み、三角関係に発展していくラブコメディー



…なんてシネマトゥディで紹介されてますけど、あんまし「コメディ」という空気ではないですね。三角関係ってほどでもないし。私目線からだと、中学生相手に勘違いしたあげくに「度」を越してしまう百瀬のダメ具合がリアル過ぎて、アイタタタタと胸に来ます。


ともかく好みの差で好き嫌いはあるかもしれないけど、これはこれで完璧に完成している映画でした。足りない所も、余分な所も一切ない。もちろん「ヒットさせる」という営利目的から逆算すればもう少し派手なシーンや展開を用意するべきなんだろうけど、クリエイトする側からすれば、作り手の思い描いた世界を十全に作品化できたものと思われます。脚本・演出・監督などを吉田恵輔が手掛けたことで、制作側にもブレはなかったのでしょう。


で、その作り手が想定した世界をそのまま再現可能としたのは、まさに「これ以外にはない」と言えるキャスティングでした。百瀬を演じる高岡蒼甫は、本人は普通にイケメンなのに、この映画だと「中学生が一瞬カン違いするぐらいには雰囲気イケメンだけど、中学生にも見透かされるぐらい薄っぺらい男」という所までちゃんとデチューンされているんですよ。佳代を演じる田畑智子も百瀬に相応しいイタさを見事に演じています。


そしてもちろん、佳代の妹・桃を演じた小野恵令奈の演技も見事でした。ただ、彼女の場合は演技以上に、その存在感そのものの功績が大きいでしょうね。15歳というフレームに収まる幼い精神性と、そのフレームからはみ出し、漏れ出てしまう肉体的な魅力。そのアンバランスさが醸し出す危うさと引力は、まさに今現在の小野恵令奈だけが表現し得るもので、1年前の彼女でも1年後の彼女でも表現することは不可能だったでしょう。


この『さんかく』の出演経験を踏まえて、小野恵令奈さんは女優を目指してAKBを卒業するそうです。例えば彼女が今後女優として大成功を掴んだとして、AKB48時代に出演したこの『さんかく』はそのスター女優の出演作一覧の冒頭に堂々と記されている作品たり得るかと思います。