■実はお奉行襲名式は一日にしてなってない!?
横浜アリーナで披露された、高瀬くるみさんの卒業公演となった『HIGH! TENSION BEYOSCOOOOOPE』では、さまざまな名場面が生まれましたが、企画出しの段階から高瀬さん当人が多くの意見を出したことがラジオなどで語られています。
例えばデビュー曲『眼鏡の男の子』に関しては、「もっとBEYOOOOONDSの歴史が動いた瞬間に入れた方がいい」という判断からセットリストに入れなかったと語られました(7月7日 SATOYAMAラジオ)。前回披露したのは島倉さんが卒業したボールルーム武道館公演で、その時点では主人公チームである「女子高生3人組」のうちの2人を既に欠いており、その状態でどう『眼鏡』を披露するのかという極めて難しいお題に対して、ライバルポジションであった島倉お嬢様が新たなヒロインになり、新しい《路線》へと旅立っていくという、島倉さんの卒業演目としても、『眼鏡の男の子』第一章の最終回としても、これ以上ない大正解が叩き出されていたと思います。
(ライバルキャラがヒロインポジションを継いで旅立つ点では『刀語』の終わり方に近いか)
確かにこの理想的な最終回の後で、『眼鏡』ストーリー本筋に関わりが薄い高瀬さんを無理にフィーチャーして小さい変化で歴史を刻むよりは、次の披露時に女子高生3人組がまるっと新メンに入れ替わるくらいの大きな変化があった方が、絶対面白いことは間違いありません。『眼鏡』の代わりに高瀬さんが初めて重要ポジションを任された『文化祭実行委員長の恋』を入れたことを含めて、このあたりの判断はさすがにエンタメ的勘所をわかっているなぁという感じです。
卒業セレモニー関係以外の名場面と言えば、やはり高瀬さんの代表曲『恋愛奉行』における二代目お奉行襲名式でしょうか。これもラジオで語られていたことですが、ある曲でフィーチャーされたメンバーが卒業した後にしばらくその曲が披露されなくなることがあるけど、それは避けたい気持ちがあったとのことでした。さらに卒業メンバーの重要パートや役どころを誰が受け継ぐのかというのはファンも気になるところなので、それを演出に組み込みたかったと。そんな時に映画『国宝』を見て、この襲名式を取り入れればいいんじゃないかとピコーンとひらめき、演出の人に提案して採用されたことが語られています。これも高瀬さんが大きくフィーチャーされた、代表曲とも言える『恋愛奉行』なのに、高瀬さんの卒業後に聴くのがむしろ楽しみになるという、ビヨの今後につながる神の一手ですよね。
(年寄りオタク的にはマジンガーZからグレートマジンガーへの主役ロボ交代顔見せ興行的な熱さも感じましたし)
ただこのアイデアの元となった「パートを誰が受け継ぐのかの披露をエンタメ化する」という根幹部分は実はそれ以前にもBEYOOOOONDSで行われていたのです。
それは夢羽が卒業した後に初めて『虎視タンタ・ターン』が披露された際のことです。途中で西田→夢羽で連続フェイク(というか雄叫び)パートがあるじゃないですか。曲が進んでいく中で「あの夢羽パートは誰がやるんだ?!」という疑問が客席の間で広がる雰囲気があったんですよ。そしたら直前まで全員がしゃがんでいて、そのパートが来た瞬間にこころちゃんがおもむろに立ち上がってお叫びを披露して、客席が大いに盛り上がったんですね。
明らかにあれは歌い出す直前まで誰が引き継いだのかを隠していたし、その披露を見せ場として演出していました。つまりは「パートを誰が受け継ぐのかの披露をエンタメ化する」の先鞭であったわけです。こうした下地があったからこそ、それをさらに進化させた「襲名式」演出に思い至ることができたんじゃないかと思っています。