えだは

モー神通信のTKです。ほんばんは。

読了

『症例A』 (著:多島斗志之
美しい少女を担当することになった精神科医師の物語。分裂病か、境界例か。非常に見極めが難しく、しかも治療法が逆ベクトルとなる両者の間で主人公が悩んでいる間は物語に惹き付けられたんだけど、中盤以降 「解離性同一性障害」の要素が出てきて焦点が分散してしまう。「解離性同一性障害」に関してはキワモノ感漂う題材ながら、ちゃんと真面目に掘り下げてはあった。


ただ、小説としてイマイチ面白味に欠けていた。主人公は過去に境界例の患者に翻弄されて離婚の憂き目に合ってるし、また物語中で相当な困難を伴う解離性同一性障害の治療に挑もうと決心をしている。だけど、なんでそこまでして治療に臨むのか、そのモチベーションが、精神医療の道を志した動機がまったく描かれていないのだ。これではどうも感情移入しにくい。