えだは

モー神通信のTKです。ほんばんは。

読了

『女のとなり』『パラダイス・サーティー』


乃南アサ


『女のとなり』は媚・嫌・妄・嬉・姦など、部首に「女」という文字を毎回のテーマとしているエッセイ集で、作者の身の回りにいる女性たちのエピソードが紹介される。…のだが、その女性がそろいもそろって性格に問題がある。


男の手によるエンタメ作品に登場する無垢で可憐で清楚な女性像に対する反発なのか、はたまた自身の性格が悪いという意識と「自分だけじゃないハズ」という自己弁護から他者のマイナス面に鋭くなるのか、一応普遍的な話につなげてはいるものの、結局は「こんなダメな女がいます」なエッセイ集。なんなんだろう、この下手したら暴露大会になりかねないダメ女大集合エッセイは。何のために書いたのさ(汗)


『パラダイス・サーティー』は、30を前にして家を出て新しい恋にのぼせ上がる栗子と、性同一障害である菜摘の奇妙な共同生活と友情を描いた小説。


それにしても乃南アサは性格に難がある女性を書くのがうまい。それも物語上「嫌なヤツ」という役割が与えられ、そのことがアピールされているキャラではなくて、素で依存心が強かったり、責任感が薄かったり、自分勝手なところがあったり、男にとって都合の良い女を受け入れてしまったり、自己評価が過剰に低かったりする女性だ。『パラダイス・サーティー』の栗子も一人称で書かれている部分を読むとそうでもないのだが、冷静に客観視するとその言動は結構イタいし。


作者のこうしたある意味ではリアルな女性描写は、『女のとなり』に見られる やけに恵まれた友人関係と、作者の女性に対する粘っこい視線から生まれているのだろうと納得させられる。