えだは

モー神通信のTKです。ほんばんは。

読了

『OL10年やりました』  唯川恵:集英社文庫
OLという人種は数が多い割には発信者になる人は少ないのか、
OL生活を題材としたエッセイというのは珍しい気がする。


『愛なんか』 唯川恵幻冬舎文庫
で、同じ作者の短編集。一つ一つの話は「物語」になる以前の、登場人物紹介で終わってる気がする。「ホストとのセックスにハマって風俗で働いて貢いでるけど幸せなんです」とか「女を使って仕事もゲット。同性の友達はいないけど寂しくないわよ」とか、単発だと自己肯定したいだけの私小説のようにも見えるけど、それをさまざまな女性のバリエーションで描けるのはすごい。ただ、その中でも小噺風にオチがついている『恋愛勘定』は白眉。


『彼女の嫌いな彼女』  唯川恵幻冬舎文庫
で、上の短編集で紹介されたような女性キャラを二人、23歳の腰かけOLと35歳の総合職お局を抜き出して対決させたらどうなるかって、ちゃんと「娯楽小説」に仕上げたのが本作。OL歴10年の作者にとっては1年目の自分と10年目の自分、それぞれの立場から互いを見、会社を見、男を見るという作業だったのか。『愛なんか』の一人称の自己肯定だけでなく、二人称の他者否定−−要するに相手への悪口−−があって、互いの視点で客観視される分、より互いの個性が際立って面白い。属性が明確だからこそ、こう、「空手家とカポエラ使い、戦ったらどうなる」あるいは「ライオンと虎、どっちが強い?」的な面白さがあるんだよね。