えだは

モー神通信のTKです。ほんばんは。

『グランギニョル』

末満健一脚本・演出による舞台『グランギニョル』を観賞しました。耽美で残酷な世界観は従来の「TRUMP」シリーズを引き継ぎつつ、今回はそれに長身イケメンたちの殺陣による圧倒的な「華」が加わった舞台となっていました。この殺陣は全体の中でかなりのボリュームと頻度で殺陣が差し挟まって来ます。あの作り込まれた衣装を着ての、身体能力が高い肉体の躍動ですから、これはかなり見応えがありました。


我らがめいめいこと田村芽実さんの活躍・歌唱も素晴らしく、不幸な役柄の彼女に一縷の希望を見せつつ、『LILIUM』を見た者にはその希望がさらなる絶望であることが理解できてしまう作りなど実に嫌らしく(褒め言葉)、そのシーンでは息を飲む音が周囲から結構聞こえましたね。



ただ脚本としてはかなり整理不足が目につきました。特に殺陣のシーンでは「なんとしても倒す」「絶対逃さない」「逃げ延びる」といったその時点における戦闘の目標が観客に提示されていないため、見ていると同じような面子で同じような戦闘をなんとなく繰り返しているように見えるんですね。特撮ファンには、ちょうど最近の『仮面ライダー』の35話付近の戦闘みたいな感じと言えば伝わりやすいかな。毎回同じ面子同士で戦って、勝負はつかずになんとなく解散して、ストーリーは全然進んでないという……。そんな風だから、アクション面での盛り上がりに、ドラマの盛り上がりが上乗せされないんですよね。新必殺技を披露してもその場限りの盛り上がりで終わっちゃうし、殺陣の最中はお話が止まってしまう。殺陣のシーンが多いだけに、これがかなりテンポの悪さを生んでしまっているように感じました。


整理不足が特に顕著だった例としては、キャラクターA・B・C対イ・ロ・ハの 3VS3の戦いで、AとBがCを先に行かせるために「ここは俺たちにまかせてお前は先に行け!」って言うシーンがあるんですよ。ところがその直後に、残った面子でイがロとハに「ここは俺にまかせてお前は先に行け!」って言うんですよ。いやいやいや! そこは重ねちゃダメでしょうと(汗) 




ストーリー自体もですね、こういう「物語世界の歴史年表」がまずあってその隙間に新たな物語を紡ぐ場合って、盛り上げるのに2パターンあると思うんですよ。ガンダムでの『ガンダム』と『Zガンダム』の間の時代を描いたOVAで言うと、『0080』みたいに「大元の歴史記述に抵触しないミニマムな出来事を描いて、その中での人物描写をできるだけ掘り下げる」か、『0083』みたいに「歴史記述に抵触しない範囲で可能な限り大事感と派手なガジェットを出す」か。だけど『グランギニョル』では悪い意味でのその中間で、大事感はなく、人物描写は掘り下げ不足というちょっと中途半端な印象はぬぐえませんでした。