えだは

モー神通信のTKです。ほんばんは。

映画『必死剣 鳥刺し』(ネタバレ微妙)

マジ必死だった!



隠し剣 鬼の爪』とか『武士の1分』と同じく、藤沢周平の秘剣シリーズからの映画化。


藤沢周平の時代小説の特徴は、藩に仕え、形骸化した制度やしきたりに縛られ、藩政の派閥争いからも自由ではないサラリーマンとして侍を描いていること。そしてままならぬ日常劇から物語が飛翔するためのガジェットとして「秘剣」が存在します。 物語もこのガジェットの最大効果が得られるよう最適化されており、要は


「 緩急 緩 緩 緩 秘剣! 余 」


という偉大なるマンネリで構成されています。
「秘剣」が露らとなる瞬間に作劇が結実する組み立てなんです。



ガンダムがどれだけ「リアルな仮想戦記もの」として評価されていても、実はリアル一辺倒では成功はしなかった。やっぱりあれは二つの目と角があるというスーパーロボット以外の何物でもない「ガンダム」が存在したからこそ、娯楽作品たり得るわけです。『STAR WARS』におけるフォースもそう。何かファンタジックな要素がないと物語は飛翔しません。ただリアルなだけでは『ダグラム』になっちゃうんです。難しいのはその配合で、初代『ガンダム』でもTV版ではまだスーパー要素が強過ぎて、後に劇場版で調整されていました。


そういった意味では、秘剣シリーズは「時代劇」を読む読者層が許容できるファンタジー度の限界ラインの見極めが見事。 それ以外にない、という見極めだからこそ、構成自体は大いなるマンネリでも構わないのです。


映画としては緩急の「緩」の部分でタップリ情緒が味わえることはいつも通りとして、本当に女性が美しいと思えるシーンが二つありました。それも、そんなそんな素で綺麗系の女優さんってわけじゃないんですよ。つまりはそのシーンに込められた情感や、人物の心情によって、文句なしに女性が美しく見えるのです。造形美に頼らないからこそ、普遍に近い、女性の美。


いつもの秘剣シリーズとしても十全の出来でしたが、
あの2シーンだけでも見る価値がある、と言えましょう。