えだは

モー神通信のTKです。ほんばんは。

リアルお見合い:その2

「ママン、釣書拝見致しました」


「どう? 申し分のない人でしょう」


「申し分がないというか…けっこうなお嬢様じゃないですか。こんなん、関西でいくらでも相手が見つかるでしょう。それがなんでよりにもよって<東京在住のフリーライター>なんてお見合い上のスペックじゃあ最底辺の男と会ってみようかって話になるのよ。絶対おかしいでしょ」


「たまには変わり種を見てみたかった…とか?」


「いやーこれ上司と不倫してボロボロになって、奥さんが会社に怒鳴り込んで社内に知れ渡っちゃって、しかも縁故入社だからその上司と父親とが顔見知りでっていう生活圏見渡す限り人間関係全滅状態か、女子高生が『のだめ』見て音大目指すぐらいの思い込みで『ゲゲゲの女房』見て貧乏新婚生活に憧れてるかぐらいしか納得のいく理由を思いつかないよ!」


「写真も見た?」


「こんなオッパイの大きさのわからない写真じゃ何も判断できない…」


「後ろに玄関しか写ってないけど、玄関からだけでも結構な規模の家が推察できるでしょう?」


「…この話になってから、基本的に僕のボケはスルーされるよね……。っていうかそこなの、注目は? なかなかに可愛らしい人だなとかそこじゃないの?」


「妹さんがいて女の子二人姉妹なんですって」


「どうすんのよ。何? 婿入りとかそういう話なの? 小林家はどうなるのよ」


「いいのよ、そんなもんは! 大体あんた人ん家に住むの得意でしょう!」


「げぇ無茶苦茶言われてる! っていうかですねぇ、そもそもの話なんですけど、仮に万が一うまくいったとして、こんなお嬢様で彼女は東京に出て来れるんですか? 私が関西に戻るって選択肢は今んとこないよ?」


「そこは決めつけることないでしょう」


「いやだって僕の仕事は東京でしかできないし、社会人としての職歴はないも同然で関西に戻っても就職口なくてニートまっしぐらですよ…?」


「そこは〜ホラ、むこうのお父様の縁故でどっかに入れてもらたりできるんじゃないの?」


「……………」


「……………」


「………それか」


「ん? なにが?」


「なんかおかしいと思ってたんや。やたら強烈に話が進むと思ったら、やっぱり『そんな仕事は辞めて関西に戻って来い』話の延長だったわけね」


「しかも逆玉よ」


「非道い! 酷過ぎる!  相手もあることなのに結婚をなんだと思ってるのよ」


「なに言ってるの! その年になってアイドル追っかけてる方がよっぽどひどいでしょ! あんたに結婚する相手のアテでもあるならこんな話はしないわよ! 大体向こうさんはあんたの現状を包み隠さず話しても、それでも会ってみようかと言ってくださってるのよ! そんな奇特な人は、鐘や太鼓で探しても金輪際一生出て来やしないんだからね!」


「も、もうやめて…僕のライフは0よ……」


「まぁ、これも縁だと思って」


「そんなまとめでいいの、この話……」





■次回予告
決定的な非対称性を孕んだまま進む人生初のお見合いマター。本人の預かりらぬ所でさまざまな思惑が交錯する中、母親との会話で心に深いダメージを負ったTKに、ついにその日付が告げられる。