えだは

モー神通信のTKです。ほんばんは。

読了


『くらべない幸せ』 香山リカ:大和書房)

何かが足りない。他者と比べ、メディアに流され、自分には「●●さえあれば幸せになれるのに」と思い込み、買い物や自己実現や婚活に精を出し、例え何かに成果を出したとしても「それでも子供を産んでいない自分は失格では」「女として求められていない自分は失格では」「仕事を持って自立していない自分は失格では」と手にしたものではなく、持っていない方に目を向けて自己否定に入ってしまう女性たち。そんな女性たちに向けて、現状の自分に満足する生き方を提唱する香山リカの著書。


と言っても、「今の自分に満足する」ための具体的な方法には触れられていない。紹介されている中でもっとも納得できたのは、「大きな障害を一つ抱えることで何かをあきらめ、あきらめることで現状での充足を知る」というものだった。例えば結婚相手が外国人である、彼氏が年下で低収入である、そういうマイナスの条件があった方が「しょうがない」と思えるのだそうだ。言ってしまえばひと昔前は見合い相手と「親が決めたんだからしょうがない」と結婚するのが当たり前で、みな「しょうがない」を前提にそれなりに幸せになったものだった。現在では自分の自由意思で決めただけに、「別の相手ならばもっと幸せになれたのでは」「この選択は間違っていたのでは」という想いにとらわれ、それが現状への不満となるのだろう。女性は自由になっても不自由なものである。


ちなみに私は元より「人とくらべる」ことからはかなり縁遠い人生を歩んでいます。そんな私がこの本を読んでみたのは、この本を通して「人と比べて幸せを実感できない人」たちを感じ、その人たちと自分とを比べて優越感を持つためです。これもまたややこしい幸福装置なり。