えだは

モー神通信のTKです。ほんばんは。

読了 ネタバレ多

『ほかに誰がいる』 朝倉かすみ幻冬舎文庫


ほかに誰がいる?
これほど私が愛せる人が


一言で言えば同級生の少女に一目惚れした少女の物語だ。主人公の一途な想いはやがて常軌を逸脱してゆく。そして暴走しそうになる自分の気持ちを押し留めるために、主人公は相手に会いに行けなくなるように自分の足をハンマーで叩き潰してしまう(そして一生残る障害が残る)。そんな風に少女の精神が正気を明らかに逸脱し、現実的破綻を迎えたエピソードが現れるのがまだ物語の中盤だという驚き。ここから半分何が待ち受けるのか? 想像の枠外に読者は連れ去られる。


とにかく、最初の二人の出会いの瞬間から最後の1ページまで、「恋の狂騒」と言えるテンションが続き、それに引っ張られて一気に読んでしまう。「ヤンデレ」とも評されるが、実は微妙に違う。なんとなれば、この主人公は相手に一度たりとも迷惑をかけていないからだ。気持ちを押し付けていない。というか告白すらしていない。実はそれがすごい。狂気の度合いをどれだけ高めても、相手の幸せを一番に考える姿勢だけは変わらず貫かれている。すべては相手の知らないところで展開し、最後まで相手の方は主人公を最愛の親友だと思っているのだ。


だからこそ、どれだけ病んでいても、どれだけ間違っていても、
ある種の憧れと幸せを願う気持ちを彼女に感じずにはいられない。
最初から破綻していた恋であった。
破滅しか待たない選択であった。
決して叶わぬ望みのはずであった。しかし…… 


彼女はこのラストで幸せになったと言えるのか。
その判断は読み手に委ねられる。
狂気に満ちた物語だが、その読後感はどこか切ない。