えだは

モー神通信のTKです。ほんばんは。

モーニング娘。ミュージカル『ファラオの墓〜蛇王・スネフェル〜』

モーニング娘。はほぼ毎年6月に舞台をしていますが、今年は昨年上演した『ファラオの墓』の改変・再演という珍しいスタイル。昨年はスネフェルとサリオキスの2人が主役でダブルキャストとなっていましたが、今年は石田さんが演じるスネフェルを主軸とした物語となっています。大きな変化としてはスネフェルの母親であるメリエト皇太后が登場人物に加わり、スネフェルの物語に多重性を加えていたことでしょうか。その分、サリオキスとアンケスエン姫のロマンスは割愛され、よりスネフェルが主役であることが明確になっていました。


少し興味深いなと思った改変ポイントが、サリオキスに関して「瞳がきれい」というやり取りがなくなっていたことですね。ストーリー的には王道の貴種流離譚なわけで、どうしてもサリオキスに重心が傾きがちなわけじゃないですか。それをスネフェル側に引き寄せなければならない。だからサリオキスから主役性を剥奪するために「瞳がきれい」をなくしているんですね。たったそれだけで、彼の役柄としての格を下げ、アンケスエン姫との間にロマンスが生じないことも納得させるという。多少ルッキズムの問題はあるにせよ、原作が'70年代少女漫画であることを思えば、「瞳の中に描き込まれる星が少ないキャラは脇役」ということで、その世界観からすれば問答無用に説得力を持つわけです。最小の改変で最大効果を得ている改変ポイントだと感じました。


あと気になった改変はケス大臣がスネフェルに精神を侵す毒を盛っていたこと。スネフェルが狂気に堕ちて行くことに一応理屈付けしてるのかなと。


全体としてはサリオキス側にキャストがダブついている印象。尾形さんが抜けたんだし、あのあたりの登場人物はもうちょと整理しても良かった気がしますね。



去年もその狂気溢れる怪演が好評価を得ていた石田スネフェルは、母親との関係性描写から役が深まり、それに合わせて石田さんの演技もさらに深化! 特に小田・ナイルキアとのクライマックスシーンは圧巻。


小田ナイルキアは初々しさこそ野中キアに一歩譲るものの、相手に恋してからの情感演技に関してはさすがの“人生何週目”かの小田氏。特に裁判のシーンではナイルキアは舞台中央に前を向いて無反応に立ってるだけでその後ろで状況が展開していくわけですが、その無表情の表情の段階で役に入り込んでいってるのがわかるわけですよ。そしてあの涙の別れへ…。