えだは

モー神通信のTKです。ほんばんは。

読了

高慢と偏見とゾンビ
(ジェイン・オースティン&セス・グレアム・スミス:二見文庫)

マッシュアップ」とは既存のものを混ぜ合わせて新しいものを創り上げることで、元々は音楽業界やIT業界で使われていた用語らしい。近年ではニコニコ動画などでも広く知られており、その代表的な例がcapsuleの『Starry Sky』をベースにDaft PunkBeastie Boysをかけ合わせて製作されたこちらの動画だろう。


で、この『高慢と偏見とゾンビ』は世にも奇妙なマッシュアップ小説」というわけである。元々『高慢と偏見』はジェイン・オースティンによって19世紀に英国で書かれた文学小説で、18世紀末のイギリスの田舎町を舞台とし、中流家庭の5人姉妹を描いた物語だった。が、なぜか本書では「英国内で死者が甦る奇病が蔓延している」という設定が付加されているのだ。うん、わけがわからない。それで上流社会では東洋で武術の訓練を受けるのが嗜みとされていて、5姉妹は中国の少林寺で修行を積んだことになっている。そして18世紀の英国の風景の中で、ド・バーグ夫人がニッポンのキョートで護衛として雇ったニンジャとエリザベスがカタナで対決したりするんである。あぁ書いてて頭が痛い。本当に何をバカなことをやっとるんだとしか言えないんだけど、すごいのはこれ8割は原文のままだということ。残りの2割を改変することで、血のしたたりと、一昔前の誤解だらけの東洋テイストが満載で、それでいて原作の香りもちゃんと残っているような、なんだかよくわからないものに仕上がっているのだ。最近読んだ中では間違いなく「読んで頭が悪くなる本」のNo.1。


しかもこれ全米で100万部を売り上げちゃって、ナタリー・ポートマン主演で映画化が決定されているらしいです…。


大ヒットに気を良くしたのか、作者は今度は『分別と多感と海魔』を執筆中で、さらに本書にゾンビを30%増量したデラックス愛蔵版の刊行も予定されているのだとか。いや、その悪ノリ商売は1発だけに留めておいた方がいいと思うヨ………