えだは

モー神通信のTKです。ほんばんは。

『釜山行き』 (新感染 ファイナル・エクスプレス)

新感染 ファイナル・エクスプレス』というクソダサい邦題がついた時点で絶対に見るものかと心に誓っていたのですが、ゾンビ愛によって頑なな心が溶かされ、ついに見に行ってしまいました! とにかく画面造りやアクション設計が新鮮だし、ストーリーの疾走感や、伏線の回収もキレイな物語の構成がお見事! アイデアをギュウギュウに詰め込んだ特濃パニックトレインでした。


■「電車」という舞台設定が何より大正解!
やはりまずは電車という舞台設定が大正義でしたね。とにかくゾンビ映画というものは「倒しても倒してもキリがない」」というゾンビ災害の特性上、ショッピングセンターの昔から主人公パーティが一箇所に籠りがちなんですよね。そこで籠城場所から出るかどうかモメたり、出て行く必然性を見せづらかったりと、ストーリーが停滞してしまいがち。ところがこの映画では、その籠っている場所(電車)そのものが移動しているので籠ってる状態でも「釜山に進行中」というストーリーは停滞しないわけです。しかも「線路が通行止め、乗り換えないと」とか「安全な駅に着きました」とか、パーティを籠ってる場所から自然に出させることもできる。また「車両」という空間的な区切りがあるので、そこを一車両ずつクリアして進んでいくという、『死亡遊戯』とかジャンプバトルマンガみたいな王道のフレームも現出させやすい。考えれば考えるほどゾンビ映画と電車というのは「発明」と言えるほどベストマッチな組み合わせだなと。


■ゾンビの脅威度設定がバッチリ!

電車内という枠組みに合わせたゾンビの脅威度の設定も絶妙なんですよ。ご存じの通りゾンビには走らないタイプと走るタイプがあるわけですが、今回の枠組みで走らないゾンビだと脅威度が低くてイージー過ぎるし、ただの走るゾンビだったらハード過ぎる。だから「走る+ある弱点」で舞台設定に対するジャストな脅威度に仕上がってるんです。しかもそれによって「釜山行きの電車内」という設定が最大限に生きるようになっているという見事さ。「相手の特性を見抜いて、クリアしていく」という過程があることによって、ただ漫然と戦うのとは違って、ステージ(車両)クリアそのものがストーリー進行となって停滞しないわけです。


■キャラクター設定が絶妙!
主人公をただのヒーローにしない登場人物の設定もビューティフルでしたね。嫌な面があったからこそ彼の人間回帰の物語が一本軸になっていましたし。勝ち組エリートの主人公に、妊婦、その夫の巨漢、JK、その彼氏の高校球児、お婆さん、足の悪いホームレス、子供という多様性の見本みたいなパーティ編成。そして嫌なヤツはめっちゃ嫌なヤツ! 『ミスト』の宗教ババァより憎らしいキャラを初めて見ました! 難を言えばコイツをもっとスカッと倒して欲しかったよ……



■ゾンビアクションも合格!
カクカク動いて覚醒するゾンビ描写はフレッシュ。ゴア度は『ワールド・ウォーZ』ほどソフト過ぎもせず、だけど一般の人が拒絶するほどではないという「丁度良い」レベルとなっていました。また上から降って来る系のアクションも多くて新鮮でしたね。これはアニメの『攻殼機動隊』とか『キャプテンアメリカシビルウォー』のアクション設計にも通じるけど、横の動きに、効果的に縦方向の動きが混ざってるんですよね。さらに波飛沫のように放射状に弾ける動きなども加わるから、画面がマンネリにならず、アクションの鮮度が保たれていました。