えだは

モー神通信のTKです。ほんばんは。

『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』(桜庭一樹)

直木賞なんか獲ったらラノベの続刊出なくなるじゃねーかボケ!で界隈ではお馴染みの桜庭一樹さんでございます。この作品は、前に読んだ『少女には向かない職業』と人物配置が同じなのが気になったけど、あとがきを読むと、どうも作者の実体験に近いところからの着想だから、どうしても同じテイストは出てしまうようですね。


中学校を卒業したら就職しようと考えている田舎町に住む主人公・山田なぎさ。彼女は父親を早くに亡くし、貧しい家で引きこもりの兄の世話をする現状から逃れるため、職業や資格や安定した現金収入といった、世界と戦うための「実弾」を早く手に入れたいと願っている。対してもう一人のヒロインの海野藻屑はいわゆる「不思議ちゃん」であり、現実に対して少女特有の妄想や虚言癖といった「砂糖菓子の弾丸」で対処を試みている。当初なぎさは裕福な藻屑を、自分ほど切実な問題を抱えていないから「砂糖菓子の弾丸」などを撃っていられるのだと断ずる。しかし、やがて藻屑が自分以上に深刻な問題を抱えていることを知り・・・・・・。


割とタイトルのまんまの話で、冒頭で宣言されている通り、「砂糖菓子の弾丸」は現実には勝てない。不幸に生まれついた者は、子供という無力な時代をなんとかサバイブして大人に辿り着かないといけないわけだが、この物語に込められているのは、そこに辿り着くことができなかった者への哀悼だ。


世間は物語の創作にあたって「少女」に価値を付与する。
その甘い言葉や、甘い夢の儚さに憧れを託して。
特にオタク向けの創作には、それにさも特別な意味や意義があるかのように
描かれた作品が溢れている。
だけどこの作者は「無力さ」こそがその核心なのだと語る。