えだは

モー神通信のTKです。ほんばんは。

桜庭一樹

刊行順に並べると『砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない』→『少女には向かない職業』→『少女七竈と七人の可愛そうな大人』→『赤朽葉家の伝説』(直木賞候補)→『私の男』直木賞受賞)と読んだわけだ。


『砂糖菓子〜』はレーベルとしてはまだライトノベルで、これで話題となって「文芸」へとシフトすることになる。その第一弾である『少女には〜』はまるで出発点を確認するかのように『砂糖菓子〜』とほぼ同じ構造となっている。一つの街を舞台とし、主人公の少女の一人称で語られる。


少女七竈と七人の可愛そうな大人』は一つの街、一組の少年少女を描くために
章ごとに異なる人物の一人称で語られる。


赤朽葉家の伝説』は赤朽葉家の家を継いだ3人の女性、
祖母・万葉、母・毛鞠、子・瞳子を題材とし、
日本の戦後史をおまかに3つの時代に分けてなぞりながら
一つの家、街、そして国の変容を描いている。語り手は瞳子


『私の男』はとある父娘の姿が、『少女七竈〜』と同様に
章ごとに異なる人物を語り手として描かれるが、
『赤朽家〜』とは逆に章を進むに従って、時代を遡ってゆく構成となっている。
つまり読者に対してまずは結果が提示され、その後に原因が開示されるのだ。


並べてみるとわかるように、なんだか作家としての引き出しを広げるために、あえて異なる形式に挑戦しているかのようだ。しかも徐々に難易度を高めるような組み立ててで。おそらくはこの推測は間違ってないと思うし、またかなり戦略的に「賞獲り」に臨んだのではないだろうか。福井晴敏氏もそうだが、元もとの活動フィールドが「文芸」に限らず枠にこだわらない作家ほど、逆に文芸界でのセルフプロデュース能力に長けているように思える。