えだは

モー神通信のTKです。ほんばんは。

『BLOOD+』

最近の(というかここ10年の)アニメ作品の傾向として見られるのは、物語の牽引役となっているのが主人公の自己実現ではなく「謎」であるということだ。『エヴァンゲリオン』以降、主人公の動向とは関係がないところで進行する事態とそれにまつわる謎が「引き」として多様されるようになっている。しかし、それらは必ずしも成功しているわけではない。


ProductionI.G.の新作である『Blood+』もご多分に漏れず多くの謎を視聴者への引きに用いているが、どうにもこの謎が魅力的でないために牽引力に欠けるのだ。この作品の主人公である女子高生サヤは過去の記憶を持たず、謎の男ハジの血を飲むことで覚醒し、翼手と呼ばれる吸血鬼たちと刀で戦うことになる。サヤの正体は? 翼手とは? 暗躍する軍との関係は? こういったストーリー展開だ。しかし、だ。今時フィクションの世界において、軍が極秘裏にモンスターを研究していたとしても、また記憶喪失の主人公の正体が殺人鬼や吸血鬼であったとしても、それはそれほどセンセーショナルな真実であろうか? 正直私にはそれがもったいつけるほどの謎であるとは思えず、この物語から牽引力を感じることができないでいる。つまり面白いとは思えないのだ。


そんなアニメ群の中にあって放映開始当初の『エウレカセブン』が際立って見えたのは、主人公であるレントン少年のホランドに憧れエウレカに想いを寄せる素直な感情とその目標へ向けた自己実現が物語の牽引役に見えたからだ。ボーイ・ミーツ・ガール、ボーイ・ミーツ・ロボットなその幕明けは実に爽やかに見えた。だからこそレントンの行動ではなく内面に焦点が向けられ内省的になってしまった中盤は物語は失速してしまったように見えた。また、平行して持ち出された牽引役としての「謎」も、意味不明な単語の羅列を招いただけに見える。謎を謎のままにしておくために、結果として視聴者への説明不足な状況が続いているのだ。これでは見ている者はただイライラするばかりである。しかしここ数回はレントンエウレカとの仲も復帰し、ようやく話も本調子に戻ってきたようで嬉しい。


そういえば最近のバラエティ番組でもクイズの答え発表やイイところの直前でCMに入ることが多いですね。あれも謎を牽引役にしていると言えますか。あんまり気持ちのいいものではありませんな。


■ まとめ
①最近のアニメは謎が物語の牽引役となっている。
②しかし魅力的な謎を用意することも、謎の提示方法も実は難しい。