えだは

モー神通信のTKです。ほんばんは。

読了

新世界より (貴志 祐介 :講談社ノベルス
「呪力」が支配するはるか未来の世界。
文明がリセットされ、人は独自の共同体社会の中で築き生きていた。その中で生きる数人の少年少女を巡る冒険の物語。


少年少女の冒険譚に視点を絞って話が進められるにもかかわらず、そのミクロな物語描写を読む中で自然と彼らが暮らす社会の姿が伝わって来る。そして、その社会の不自然さ、いびつさ、そこに潜む不安と不吉が伝わるにしたがって、徐々に読み手の胃を押し上げる圧迫感となってくる。最近は青春ものも書いてたし、冒険ものと思って読んでたから油断した……。『黒い家』とか『天使の囀り』の人だった…。


とにかく2段1000Pのボリュームでありながら、物語へ引き込む力と先を読ませる牽引力が素晴らしく、ほとんど一気に読み上げてしまった。




『非情人事』 江上剛:文春文庫)
会社員の人事にまつわる短編小説集。著者は30年もバンカーだった人だけに、人事云々というよりは銀行の統廃合に伴う権力闘争に関するエピソードが、説得力があって興味深かった。


ただ人事モノ全般に関しては、垣根涼介のリストラ請負人を主人公とした『君たちに明日はない』の方が定点視点のわかりやすさ、キャラクター小説としての読み易さで上だった。