えだは

モー神通信のTKです。ほんばんは。

『ステーシーズ 少女再殺歌劇』

この舞台のポスタービジュアルを見た時に思ったのは、自分が思った通りの『ステーシーズ』、覚えている通りの『ステーシーズ』だということ。だから結構原作そのまんまやるんだろうなとは思っていたんです。だけど実際に直近になって原作を読み返して見ると、原作の方がむしろ表現がしつこかったり、描写が饒舌過ぎて焦点がボヤけてたり、オチがアレだったりと記憶と随分違っていたんですね。つまりあの舞台は「印象として残っている『ステーシーズ』」、「記憶の中で美化された『ステーシ−ズ』」にむしろ近かったということ。それは何気にすごいですよね。代表的な違いは舞台の方はステーシーたちが美しいんです。原作ではステーシーたちが生前に比べていかに醜く変貌しているかが結構しつこく描写されているんだけど、彼女たちを殺す男の側の悲壮感を出すためには、男たちが再殺する対象は美しいままである方が絶対に効果的でしょう。それに実際にゾンビメイクをしてしまったらその方がギャグっぽくなってしまうだろうし。


それとあの舞台が素晴らしかったのは、ちゃんとステーシーたちが怖かったということ。ニアデス・ハピネスでさざめく笑い声、少女たちのユラユラとした無感情な歩み、愛する者の変質… ロマンチックで時には笑いさえ起き、何より「モーニング娘。が出演してる舞台」なのに、それでも時々背筋が粟立つほど怖い瞬間があったんです。うまく言えませんが、この舞台『ステーシーズ』という絵画は、一番の下地として「恐怖」が塗られている。恐らくはそれがこの舞台の美しさと切なさを支えていたような気がします。