読了
『いっぺんさん』 (朱川湊人:実業之日本社)
昭和の世界を背景とした、ジェントルゴーストストーリー。
『太陽の村』 (朱川湊人:小学館)
オンラインゲームに夢中な引き籠りの主人公は、飛行機事故に合い、
とある村に流れ着く。なんとそこは現代世界とは異なる歴史の中にある世界であった。
電気もガスもなく、為政者の圧政に苦しむ農村に
異邦人として入り込んだ主人公は
否が応にも引き籠りを脱し、周囲との関わりを持つこととなる…。
朱川湊人と言えば、『いっぺんさん』のような伝奇的・幻想的な要素を織り交ぜた世界が得意で、昭和情緒やノスタルジアを感じさせる世界を得意とする作家だという印象が強い。短編を含めてもコメディタッチのものはほとんどなかったハズ。そういった意味でこの作者の経歴の中では異色作と言える。本作はいわゆるオタクの一人称で書かれているんだけど、主人公の軽さやボキャブラリーや、なにより目の前の状況に心の中でブツブツつっこんでるラノベ主人公みたいな姿勢がごく一般的なオタクとして違和感がなく(ごく自然に2ch用語も出てくるし)、こういう物語も書けるのね、と驚いてしまった。作者はそういう素養もある人なのか。それともネット文化を「勉強」した成果としてこれを書いているのか。あまりにこれまでの作風と異なるので、そのあたりまで気になってしまった。
結末には賛否両論あると思う。
私は主人公の選択を支持しない。
だけど、自分が主人公ならやはり同じ選択をしたと思う。