えだは

モー神通信のTKです。ほんばんは。

読了


『楽園』 宮部みゆき:文春文庫) ★★★

模倣犯』の主人公であった前畑滋子が引き続き主人公を勤めるということで、『火車』−『理由』−『模倣犯』と続く社会派の系統かと思いきや、『龍は眠る』とか『レベル7』といった初期作品のような超常もののファクターも入っていたりして、ある意味ではハンパと言えます。『理由』のような重厚さにも、『クロスファイア』のようなエンターテインメント性にも振り切れておらず、ジャンル的な座りの悪さを感じるからです。


内容的にも、どうしても登場する姉妹の片方が優しい良い子で片方が究極DQNというのが納得しづらくて。「両親が同じように愛情を注いでも、大きな波に流されるように、どうしようもなく子供がグレてしまうことはある」というのが物語の主題の一つでもあるんですけど、それが真実だとしても、やはり感情的に納得しづらいんですよ。ただ「グレる」ってレベルじゃなくて、思わず両親がその子を殺してしまうぐらいとなるとなおさらね…。『楽園』というタイトルへの収斂具合も弱く、著者の作品の中では珍しく収まりが悪い印象でした。


人間描写は『理由』『模倣犯』寄りで肉厚なので、
読んでいる間は十全に楽しめるんですけどね。