えだは

モー神通信のTKです。ほんばんは。

読了



『夢を与える』
 綿矢りさ河出書房新社

美しく生まれつき、少女モデルとして活躍する主人公・夕子はやがてタレントとして芸能活動を始める。タイトルはこのタレント業が「夢を与える」商売であることから。


両親の不和、友達のいない学校、麻痺してゆく常識、自分だけで参加した業界のパーティ、つきまとう変執的な同級生、そして人に夢を与えるほどに空っぽになっていく内面……と、いつ踏み外してもおかしくない状況の中で、なんとか健全な心を保ち、芸能人としてキャリアを重ねていくヒロインが描かれ続けるが、最終的には最悪の破滅を迎える。


なんだか、積み上げたブロックを崩して喜ぶ作者の稚気のようなものが感じられる。悪い予感ばかり暗示しておいて、なんとか無事に乗り越えるってことを繰り返し読者をハラハラさせておいて、最後にドーン! だ。それはわかりやすくドラマチックな展開を生むのかもしれないし、描き手にとってはカタルシスを感じるのかもしれないけど、本一冊分つき合った方としてはやり切れない気持ちしか残らない。


それに、「幸せな人間を最後の最後に不幸にする」っていうのは作劇手法としてはやっぱり陳腐に思える(その不幸から立ち上がろうかという瞬間で物語を締める、というのも同様に、パターン過ぎて陳腐だ)。タイトロープな状況を渡り切って幸せになる物語こそ、書き手の力量が求められるんじゃないかと。


まぁ単純に女の子が不幸になる物語は性に合わんのです。