えだは

モー神通信のTKです。ほんばんは。

読了

『向日葵の咲かない夏』 道尾秀介新潮文庫

欠席したクラスメートSの家を訪ねたミチオは、そこで首を吊って死んでいるS君を発見する。しかしそれを知らされた教師が現場に駆け付けた時、そこには首吊りの痕跡だけを残して死体が消え去っていた。ミチオはある事情から妹のミカと共に事件の真相を追い始める。


蜘蛛に生まれ変わって現れたS君、口達者過ぎる3歳の妹、口寄せによって断片的なヒントだけを示す老婆……。

ミステリと呼ぶには非現実的なファクターが多過ぎるため、読者は早い段階で文章を読んで想起される風景と、実際の事実の間にズレがあることを察知する。つまりはなんらしらの叙述トリックが介在しているのだろうと。実は多重人格でこのキャラとこのキャラが同一人物なのでは? とか、第三者には●●は見えていないのでは? とか。しかして結果は……。 叙述トリックというのは、その一つの視点が読者に開示されることで物語世界の見え方が一変するような鋭い切れ味が要求されるんだけど、本作の場合はその要素が多くて、錆びた刀で何度も叩きつけられるような、どうも騙される爽快感に欠ける印象。


2009年に売れた文庫本1位らしいんだけど、なんでそんなに売れたのか理解できない。