えだは

モー神通信のTKです。ほんばんは。

読了

『告白』
湊かなえ双葉社



学校で起きた女教師の幼子の死亡事故は事故ではなかった。
ホームルームの時間に我が子の死亡事故に関して、
ある告白を始める女教師。
このクラスの生徒の中に我が子を殺した犯人がいる。
母親として、大人として、担任教師として、
彼女が選んだ冷徹な選択とは。


この作者のデビュー作にして「このミス」1位。
おまけに本屋大賞まで獲っちゃったりして。


あらすじで書いた事件について、
章ごとに6人の登場人物の視点で語られる。



いくつもの視点があると、犯人の側の心理や事故性、偶然の要素などが見えてきて、どうしても同情の余地ができてしまう。 しかし相手に同情や共感できてしまうと、どうしても復讐劇としての痛快さは得づらくなってしまうのだ。 断罪とは片方の倫理観だけで一方的に裁くからこそ、そこにカタルシスが生じるのだろう。


同様に、多数の視点を経験すれば作品世界の倫理規範もブレてくる。もともと第一章の主人公の復讐行為を100%正しいと思う人はいないだろうが、これに輪をかけて、いろんな人物の内面に共感するうちに何が正しいのかが読み手としても曖昧になってくるのだ。そのために最後のエピソードでの復讐の完遂に対してどのように感じればいいのか、やや戸惑ってしまった。



そういう意味で、やはり復讐譚として完結している第一章が一番インパクトがあり、スパンと切れ味も鮮やか。実効性とか細かいことは置いておいて文句なく面白かった。何が正しいのか、どうするべきだったのか、なんてアレコレ考えさせない。


残り5章も面白くはあるんだけど、やはり一章の面白さの余韻で読ませられた部分が多く、蛇足と言えば蛇足だと感じた。