えだは

モー神通信のTKです。ほんばんは。

映画『パラサイト 半地下の家族』

カンヌ映画祭パルムドールを獲ったと話題になっていたので、『パラサイト 半地下の家族』(公式サイト)を吉祥寺オデヲンで見て来ました。私はあまり韓国映画をたくさん見てる人ではないのだけれど、そんな私でも本作を撮ったポン・ジュノ監督の作品は『殺人の追憶』、『グエムル』、『スノーピアサー』、『オクジャ』と4作も見ているから、それだけメジャーな作り手ということですな。

 

作品はとにかく映像として豊かで饒舌。アングル、カメラの上下の動きや画面の明暗、すべてが計算し尽くされていて、なおかつ象徴的な意味が込められています。物語の舞台こそミニマムですけど、映画言語による修辞を巧みに駆使した名文という感じで、この時点でそりゃあシネフィルからは高評価だよなと。そういうウェルメイドな土台の上に構築されているので、前半はある意味スプラスティックな展開でもあるんだけど、軽くもなり過ぎない。そう、このどっちに転んでもいいバランスが保たれている点が素晴らしいんですよ。

 

よく映画の宣伝文句で「衝撃の展開!」とか「予想不可能な大どんでん返し!」なんて謡われることがありますが、その多くは後出しジャンケンみたいなもので、映画そのものの面白さにあまり寄与してなかったりもします。そんな中で、本作の場合は後半のツイスト展開を経た時点で結末まで至るすべてのカードが出そろうので、結末への道筋は幾つも予想はできるんですよ。ただ、その考え得る結末が全員がハッピーな終わり方から、全員悲惨なものまで、幅がおそろしく広いし、そのどの道筋に行ってもおかしくない状態で話がどんどん進んでいくんですよね。どっちに転ぶのか、どの道筋に展開するのか、どれくらいのシリアス度で落着するのか。登場人物の倫理観はゆらゆらと揺らぎ、見ている側の感情も揺さぶられ続ける。その不安状態から徐々に、道筋の幅は狭まっていく。貧しい人が多くの選択肢を持たないのと同じように、意に反して理不尽に可能性は狭まっていく。そして些細ではあるけど、深く納得もできてしまう理由で、一つの結末に至る。うーん、やられた!

 

特に韓国映画の場合は「善人がハッピーエンド」とか「悪いヤツはひどい目に合って終わる」というような倫理収支にあまりこだわらない作品が多いので(だから後味が悪いこともある)、余計にどこに落着するのかわからない綱渡り感覚が強いように思いました。

 

あとは途中でジャンルを横断して展開していくので予定調和が通用しないというのも韓国映画に多い特徴なのかな。この映画で大富豪役をしてたイ・ソンギュンが主演をしてた『最後まで行く』もそんな感じでしたしね。