えだは

モー神通信のTKです。ほんばんは。

『アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』を字幕版と吹き替え版で見てみた

劇場でも一度見た『アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』をBlu-Rayで改めて見直しました。劇場で見た時には「やはり前作のインパクトは超えられなかったか…」なんて思ってましたけど、2回目見るとずっと面白く感じ、私の中では前作と肩を並べたかも? ヒーロー大集結もので、各個別作品の膨大な設定が集約される作品でもあるので、やはり初見だと情報量が多過ぎて消化不良になっていたのでしょう。それだと映像そのものを楽しむ余裕もできませんしね。(そのあたりは放映当時にはイマイチに感じた『Zガンダム』が放送後何年かしてまとめて見直したら面白かったのと似た感じかも)


で、吹き替え版と字幕版を見比べたのですが、そこで結構翻訳に差があり、それによっても印象が変わるシーンが結構あることに気が付きました。例えば街が壊滅する惨状を自分のせいだと打ちひしがれるワンダをホークアイが諭す場面。


<吹き替え>
誰のせいだとか 言ってる場合じゃないぞ
なんたってこの通り、街が空飛んでるんだから
ロボットはウヨウヨ
こっちは弓と矢 まともな状況じゃない
俺は外に戻る 仕事だからな


<字幕>
誰のせいだとか 今さらどうでもいい
街が宙に浮き 敵はロボット
俺の武器は弓 笑えるだろ
でも戦うのが仕事だ。


ホークアイというのは世界一の弓の名手ですが言ってしまえば能力はそれだけで、他のヒーローたちのようなスーパーパワーは持っていません(ブラック・ウィドゥもただの人間ですが、彼女の場合は情報収集の面でチームに貢献していますし、そもそも紅一点でもあるので他のヒーローと単純比較されることは少ない)。なので戦闘力の面ではどうしても見劣りしてしまうわけです。そのことはホークアイを演じるジェレミー・レナーもそれをネタにした自虐ソングを披露していました(動画)。誰だって日々の部活や仕事の中で「俺はアイツほどの能力はない」なんて誰かと比べて自分の力不足を自覚しながらも「それでも今は自分がやれることを精一杯するしかない」なんて顔を上げて頑張ってるわけじゃないですか。そういう大多数の観客が感情移入できる「凡人代表」としての立ち位置が、この「自虐からの決め」というふり幅がある字幕版の方が明瞭な気がします。


ただ戦闘力では劣るホークアイですが、チームの中では彼だけが奥さんと子供が待つ幸せな家庭を持っているんですよね。過ぎた力を得れば平凡な幸せからは遠ざかってしまう。スーパーヒーローと対比させるその落とし所も見事だと思います。そう言えば『攻殻機動隊』の9課の中で唯一体をサイボーグ化していないトグサにだけ妻子がいるというのにも通じる面がありますね。




一方で執事AI 「ジャービス」とジャービスから生まれた人工生命体「ヴィジョン」がらみのシーンでは、加瀬康之さんの温かみのある声と演技が最高なこともあって、吹き替え版の方が圧倒的に好みですね。それに吹き替え版だとヴィジョンが敬語で話すんです。オレ様キャラばかりのチームの中での唯一の「敬語キャラ」ということで個性が際立っていると思います。


例えば同じく人口生命体であり今回の敵であるウルトロンにヴィジョンが「人類は欠陥はあっても魅力的だから、私は彼らの味方をする」と宣言するシーン。ウルトロンに「お前はどこまで青臭いんだ」となじられて返す一言

<字幕>
それは…
昨日生まれたから


<吹き替え>
まぁ…
昨日生まれたばかりですから


どうです? 吹き替えの方がヴィジョンの「元執事」らしい控えめで冒頓なキャラクター性がより明瞭になっているでしょう? 正直字幕で見た時にはヴィジョンに対してはほとんど「誰だよコイツ」状態だったのですが、吹き替え版で見ると声に特徴があってジャービスとのつながりも明確であったし、彼のキャラクターも明瞭に伝わりました。


こんな風に字幕と吹き替えを比較するのも楽しいもの。また特典映像の未集録シーンを見れば本編では割と唐突だった部分のつながりもわかりやすくなりますし、次回作へ向けたインフィニティ・ストーンがらみ伏線もより詳細に描かれていたりします。監督のオーディオコメンタリーも興味深い話のオンパレードなので、これからもマーブル作品を楽しむ人なら、このBlu-Rayは見所が多い一枚だと思います。