えだは

モー神通信のTKです。ほんばんは。

読了

『重力ピエロ』 (伊坂幸太郎:新潮社文庫)
家族の物語。
その人たちにとって当たり前のことを、世界全体が認めない時に、どれだけの徒労を強いられるか。その理不尽さに打ち勝つためのブレイクスルーは膨大な日々の積み重ねの中からしか生まれてこない。


本当に、世の中には無知と悪意が確かに存在し、なんの落ち度もない人間が一方的に決して取り返しのつかない被害を受けるような理不尽が存在する。しかし、それを前提として「物語」を構築することは難しい。原因があり、それに見合う結果が用意されてこそ、物語に整合性が生まれるしカタルシスが得られる。だけど既に理不尽な暴力に苦しんできた人たちが、どんなリアクションをしても、本当の意味で原状回復がなされるわけではない。そこにギリギリまで向き合った人間でないとこの作品の題材は扱えないと思う。