えだは

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橋本慎×星部ショウ×児玉雨子×ぱいぱいでか美×北野篤「聞きたい! 新世代のハロプロ作家の作詞作曲術!」 :その2

先日本屋B&Bさんで行われたトークイベント 橋本慎×星部ショウ×児玉雨子×ぱいぱいでか美×北野篤「聞きたい! 新世代のハロプロ作家の作詞作曲術!」のレポの続きです。

 

2019年ハロプロ3大トピックとしてゲストがそれぞれBEYOOOOONDSのことを挙げていたので、BEYOOOOONDSがらみの話題はまとめてすることに。そこでは歌詞の初期稿や完成前のデモ音源、MVの文字コンテなど貴重な資料も公開されて、曲ができる過程などが解説されていました。ここでは曲ごとにトピックをまとめて話を再構築しています。

 

 

  ■『眼鏡の男の子』

まずは星部ショウさんから、この曲を「第2回FOREST AWARD NEW FACE オーディション」に提出したのがハロプロで仕事をする切っ掛けで、当初は『眼鏡の男の子』ではなく『眼鏡の女の子』であったという、既に星部さんのライナーノーツで書かれている経緯が一通り説明されます。そしてその最初期の音源が公開されました。この音源は星部さんが『新世紀ミュージック』に出演された際にバックで流れていたものですね。アレンジはアコースティックで今よりずっとメロウな雰囲気。テレビではコメントと重なって聞き取れなかった部分の歌詞が

 

 「桜色したブックカバーに

 隠してるのはどんなストーリー

 いつでも君は僕を素通り

 眼鏡、眼鏡の女の子」

 

 と「ストーリー」と「すどぉーりー」で韻を踏んでてちょっとオシャレだったことが判明。 

 

次に流されたのは、BEYOOOOONDS用であることを前提に調整されたもう少し進んだ未完成音源。既に冒頭に星部さんの裏声による小芝居の掛け合いが入っていますが、登場人物はまだ女子高生3人組のみ。しかしその後の「今日もすし詰め満員電車~」の口上は割と今のままでした。  

 

これが提出された後に、野沢トオル氏によって冒頭の芝居部分の登場人物が9人に増量されて、今の形の大枠が完成したとのこと。 

 

ちなみに上記のデモ音源のアレンジがファミコン風のピコピコ音だったのですが、それを聞いたぱいぱいでか美さんから 

でか美:ファンの方でBEYOOOOONDSの8bit音源を作ってる方いますよね、好きでよく聴いてるんですけど 

と知り合いのセルダー(@selder16)さんの音源への言及があって「今度でか美イベントに一緒に行くしか‼」と個人的には高まりました。  

 

ここから北野さん。BEYOOOOONDSへの参加はシングル各曲のジャケットやMVなど。ジャケットのアートワークは「モーニングみそ汁」と同じデザインチームとのことで、ここで公開された大ラフのイメージ案で既に少女漫画「りぼん」単行本風のイラストが描かれており、全体のビジュアルイメージがこの時点で既に固まっていたことが伺えます。そしてこのデザインラフを描いたのは過去に法廷画家やってた人だそうで、短い時間で人物の特徴を捉えるのがやはり得意とのこと。ちなみに法廷画家の人はMVの撮影に同行して、なぜかみいみとにらめっこをしてたそうですw 

 

『眼鏡』のMVは北野さんがまずあらすじを書いたとのこと。ただ映像監督だけに任せるとなんとなくの芝居をつけてしまうので、北野チームの女性スタッフと一緒に登場人物のこの子はどんな子で電車の中では何をしているのかと、キャラクターの細部・隙間を掘り下げて詰めていったとのこと。例えば江口さんだと真面目な子だから単語帳を見ているんじゃないかとか考えて、その場で単語帳を買いに行ったと。北野チームが「大枠」と「ディテール」の両面から作品世界の構築に貢献していたことが伺えます。   

 

 

 

■『アツイ!』

『アツイ!』のMVは、公開こそアルバムプロモーションのタイミングになったけど、実は楽曲発表順と同じく『眼鏡』の次に製作されていたそうです。 

「確かにみんな若くて…特に美葉ちゃんの顔が幼いと思ってました」

とでか美さん。橋本氏曰く、当初は『眼鏡』の可愛い系か『アツイ!』の激しい系か、どちらで行くんだろうと思わせる作戦だったとか。  

 

ここでモニターに北野氏によるMVのVコンテ(プレゼン用のラフな動画)が映されました。『アツイ!』の音源に合わせてさまざまな動画がコラージュされた映像だったのですが、これがまぁ、まんまアレでアレというか。元ネタ開陳大会と言いますか、当然絶対に外には出せないヤツでして。 

北野:「アツイ!」というか「ヤバい!」って感じですねw  

深夜テンションのままに作られたというこのVコンを見て、「これはイケル!」と思ったと橋本氏。なんでだよ・・・・・・(汗)   

 

 

 

■『Go Waist』

「west」と「waist」とをかけたのは橋本氏の発案。「Go West~」部分を「ビーヨーンズ」にするのは最初の頃から決まっていたそうです。あとは雨子さんが「BEYOND=超える→肥える」と展開してワークアウトソングとして歌詞が進められ、そこにブートキャンプ要素を加えたのは野沢トオル氏。そこからほのピアノをどうするかという話になり、「運動は体操で締めるもの」ということから整理体操を入れることに。ラストに体操が入ると伝えても編曲の大久保薫氏はどういうことかピンときてないようだったので(そりゃそうだ)、橋本氏が仮に体操音を入れた音源を渡したら、「そういうことか」という感じで納得してくれて完成したと。 

 

ここで雨子さんによる歌詞の初期稿がモニターに映されたのですが、サビが 

も~Waist 燃やしてこう

も~Waist モヤシ食おう 

となっており、雨子さん曰く「今見るとゾッとする」とのことでしたw  

 

MVに関してはテレビ番組をザッピングするアイデアは当初からあったと北野さん。ただサヤーズ隊長は今でこそ江口さんに腹筋メイクしたものになっていますが、当初はパンプアップした江口さんが本当に別人に変身して全然知らないマッチョなおばさんになる予定だったとか。歌部分はそのおばさんがちゃんとリップシンクまでする予定だったそうで、もし実現してたらメロン記念日が黒人男性に入れ替わった『お願い魅惑のターゲット』以来のクレイジー案件になってたことでしょう。夜中の1時にムキムキの女性のリストをみんなで見てキャストのリストアップまでしたけど、ギャラの問題で断念したとのこと。   

 

 

 

■『ニッポンノD・N・A!』

当初のタイトルは『怒れD・N・A!』。初期デモ音源が流されたのですが、これが今とはまったく別モノのテンポも緩いダサラップw 

ヘーイ YOー 1億2600万人のジャッパニ~ズ♪

(ジャッパニ~ズ)

みたいな。メロディも違ってましたね。

 

 次の段階のデモは緩い縦ノリのいわゆる『おら、東京さ行くだ』的なIKUZOラップ。 

 

この後でDA PUMPの『USA』を意識してユーロ路線に舵を切り、日本にユーロサウンドを広めた人と言えばTK! という流れからTKサウンド路線で進めることに。披露された次の段階のTKコードデモでは「生粋の内弁慶~」の部分が「「生粋のお人良し~」とか歌詞はまだ未完成でしたが、メロディとしては今の大枠は固まっていた印象でした。あと歌詞で日本の良いところを羅列してるんだけど、

「カラオケ・胃カメラ・ウォシュレット!」

なんて歌詞もあって、「語呂がイイ!」とひとしきり盛り上がる 。 

 

でこのTKサウンドでまんまとひっかかっ…(ゲフンゲフン)乗って頂いたのがDJ KOOさんで、KOOさんがTwitterで言及した後でYouTubeの再生数が一気に伸びたと橋本さん。

 

余談ですが北野さんはハロコンにDJ KOOさんに出てもらって trfはテツヤ・コムロ レイブ ファクトリーの略ですからー!」って言ってもらうことを提案したけど、苦笑いで流されたそうですw  

 

MVにおける、とある会社の放送室から始まって、社内を巡って、屋上に行って主張して・・・という大枠は北野さんの最初のラフコンテでもうできていたそうです。会社で書類の紙吹雪の中で歌うのは新宿三井ビルののど自慢大会などもイメージソースになっているとか。 いろんなことが繋がっているなあ・・・。

 

 

■『恋のおスウィング』

この曲は詞先で製作。『眼鏡の男の子』の世界観を広げるという趣旨の発注で、雨子さんが詞を書き、そこからセリフを追加したりと調整が入って完成。  

 

 

 ■『高輪ゲートウェイ駅で抱きしめて』

こちらも製作の経緯は星部さんのライナーノーツに書かれている通りなんですが、星部さんと橋本さんがヒャダイン氏のラジオに出演した文化放送からの帰り道の電車内での会話を小芝居で再現してて、それに対して雨子さんから

「オジサン2人がいちゃいちゃデートしてるようにしか見えない・・・」

というツッコミが入ってました。  

 

 

『高輪』の流れから橋本さんより「BEYOOOOONDSの弱点は時世に合わせ過ぎなこと」というお話が。春には高輪ゲートウェイ駅ももう完成してしまうし、『元年バンジージャンプ』も今年には合わなくなってしまったと。ただでか美さんから「2年は言いづらいけど、3年はできる」とも。

「さぁ、3年だバンジージャ~ンプ♪」

確かに。     

 

 

北野氏曰く、BEYOOOOONDSはシングルからアルバムの期間も短くスケジュールもタイトで、MV3種ジャケ6種は地獄だったと。徹夜続きの合宿状態で、星部さん・野沢さんとよく一緒にご飯に行って「俺たち頑張ったな」とお互いを褒め合って乗り切ったそうです。良い話かと思いきや雨子さんより

「なんで私は呼ばれてないの!? 私も頑張ったよ??」

確かに。   

 

 

 

 ■総括

さまざまな要素がてんこ盛りのBEYOOOOONDS楽曲群やMVがどういう発注がされ、どういうやり取りの中で作り上げられたのかはずっと不思議だったのですが、今回お話を伺ってそれが見えてきましたね。大勢の人物がアイデアを出し合ってブラッシュアップ・・・というかカオス度をどんどん盛り足していってでき上がったんだなと納得できました。煩雑なやり取りと連絡のタイムラグを避けるためにグループLINEなども駆使して効率化を図っているのも印象的。

 

そしてカオス度を上げるに当たって、従来のハロプロにはなかった要素を加えたのが北野篤さん。星部さんや雨子さんはこれまでの実績もよく知られていましたが、北野さんに関してはBEYOOOOONDSがらみで初めて名前を知ったという方も多いかと思います。モーニングみそ汁とかセカパカの時にはお名前を出されてませんでしたからね。ご本人的にも2019年は「自分の名前を出していこう」と意識されていたらしく、そのことから「BEYOOOOONDSの話題の盛り上がりは自分をフックアップしてくれた」という感覚があるとのことでした。

 

 名前を聞き始めてからも具体的にどういった要素を担っているのかはいまいち見えて来なかったのですが、お話をうかがっていると、BEYOOOOONDSにおける面白い要素のかなりの部分が北野さん発案。MVやアートワークにおけるアイデア出し、0を1にする作業は基本的に北野チームの担当のようでした。遊び心のあるアイデアマンで、しかも「実力診断テスト」なんて単語が普通に会話の中に出てくるあたり、ハロプロにも相当詳しい。信頼できるキーマンという印象で、今後もBEYOOOOONDSにもガッチリ関わり続けて頂きたいですね。 

 

 

残る話題はレポその3へ続く・・・・・・かも?