えだは

モー神通信のTKです。ほんばんは。

震災と自衛隊

以前に買った徳間書店の『自衛隊!』の震災出動の特集本ですけど、
この本から伝わる大きなトピックとしては二つあったように思いました。
内容をまとめると以下のようになります。



●今回の震災において迅速な初期対応ができたのは、阪神淡路大震災の経験から、震災発生時のマニュアルが作成されていたから。

今回の震災においては、震災発生と同時に当該地域の自衛隊自動的に第3種非常勤務体制に移行し、上級司令部レベルで情報収集も開始。そして統合幕僚監部で作製されていた災害派遣計画を実行に移したそうです。どうもTV報道だけを見ているとあたかも自衛官の「志しの高さ」「被災者を想う気持ち」といった精神力だけで物事がうまく行っているかのように見えてしまいがちですが、考えてみれば組織というのは適切な運用マニュアルと、その実行を可能とする練度がなければ機能しないもの。今回の対応の速さは、震災までの事前準備と日々の演習の成果であったとのことでした。



●組織の特性に無知な「政治主導」のせいで現場の負担は増えた。

物資の集荷・輸送を自衛隊にまかせたことが一例に挙げられるでしょう。もちろん、瓦礫をかき分け、橋をかけ、道なき道を行くなら、自衛隊に勝る組織はありません。だけど、一般車両が通行可能となった道路を搬送するだけなら、民間の流通業者で十分可能だし、その方がずっと輸送力も高いのです。民間にまかせればいいところまで自衛隊にさせたせいで、本来、自衛隊の能力こそを求められる不整地でマンパワー不足に陥り、隊員にオーダーワークを強いる結果になってしまったとか。報道で「不眠不休の救助活動が続けられており〜」なんて聞くと勇ましいイメージを持ってしまいがちですが、適正なローテーションがあってこそ、効率的で継続的な活動が可能となるもの。「不眠不休」なんてのは決して褒められるべきことではなく、現場にもたらされた混乱の結果、自衛官たちに負担が増えた結果に過ぎないのでした。


(ちなみに自衛隊は組織規模に比して継戦能力・輸送力は高くはない。専守防衛を旨とする組織の性格上、「補給線が伸びきった戦場」を考慮することの優先順位は低く、限られた予算はより優先順位の高いセクションに回される。生物と一緒で、必要ではない能力は進化しない)



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