えだは

モー神通信のTKです。ほんばんは。

読了

阪急電車 有川浩幻冬舎

関西ローカルの私鉄である阪急電車の中でも地味な今津線を題材とし、宝塚南口〜西宮北口の車内でくり広がられる人間模様。西宮北口で折り返しての帰りは行きから約半年後のお話。


それぞれは電車の車内・ひと駅分に集約される短い話なので、ドラマを作るためにはその人物の背景がそれだけで浮き彫りとなるエピソードが必要なわけだけど、その切り口がどれも鮮やか。今津線というローカル度とほど良く合った、日常と地続きの、それでも確かに心に残るエピソード。そしてこうした連作集には珍しく、登場人物たちにも思い入れが深まった。NHKかどっかで連続ドラマ化して欲しいなぁ。


いわゆる感動大作ではない。けど、好きな歌手の「一番のお気に入りのカップリング曲」みたいに、思わず人に薦めたくなる佳作。その役割に対する充実度という点では今年に入って読んだ中で一番だと思った。




私自身が宝塚線に近い大学に通っていたので、ちょっと嬉しくもあり。そういう「地元感」では他に逢坂みえこの『永遠の野原』シリーズなんかも親近感が湧いたな。主人公は豊中、ヒロインはひばりヶ丘花屋敷在住だったので。