えだは

モー神通信のTKです。ほんばんは。

読了

『GOTH モリノヨル』

乙一×新津保建秀

少女を殺害し、その遺体を撮影することを生き甲斐とするカメラマン。かつての撮影現場に被写体の命日に訪れた男は、そこで記念撮影をする制服姿の少女・森野に出会う。


乙一による小説『GOTH』の番外編。小説と、その内容を題材とした写真という二部構成になっている。


かつて直木賞を獲った『私の男』については「ヒトゴロシの異質さを描いた作品」だと評したが、この作品の肝となる登場人物はそのヒトゴロシですら戦慄する存在である。異質ですらない、日常にポッカリと空いたただただ虚ろな深淵。通常なら人と殺人者(非日常)との対比で描かれるべき部分が、殺人者と超越者との対比で描かれる。読者はいつの間にか、殺人者の視点で読み進み、そして自らよりも深い闇の淵を覗きこむ不安感に陥る。

ただしそこまでの超越者にリアリティはなく、この作品が文芸として評価されることはないだろう。だけど厨ニ的な憧憬を喚起する能力は高い。


『GOTH』の続編とは言え、これだけで独立して読める短編であり、短い分、その切り口は実に鮮やか。短い分量での完結性と、その中に乙一(暗黒サイド)の個性が鮮烈に発揮されているという点では、これまでの同作者の作品の中でも群を抜いている。乙一を読んだことがない他人に乙一を勧めるのならば、あるいは『GOTH』本編よりも最適の一冊だかもしれない。


後半は写真家・新津保建秀による写真集パートで、森野と思わしき制服姿の少女の姿が収められている。
 

モデルとなっている少女は映画『GOTH』でも森野役を勤めた高梨臨


後のシンケンピンクである。



P.S.
写真集が付属している関係で短編一つで1600円と非常に単価が高く、ネット上ではすこぶる評判が悪い。私は高梨臨も好きなので悪くないコストパフォーマンスだと思ったのだが。