えだは

モー神通信のTKです。ほんばんは。

読了

『死んでも忘れない』

乃南アサ新潮文庫



<あらすじ>
かつて妻の浮気という男にとって最も屈辱的な理由による
離婚を経験している夫。


母親に捨てられた経験を持ち、
いじめの標的が日々変わる教室の中で
なんとか標的にならないように過ごす15歳の息子。


気を遣いながらも15歳の連れ子と
良好な関係を築く妊娠中の妻。


それぞれにナイーブな部分を抱えながらも互いに支え合って
新興住宅地で幸福に過ごす夫婦と息子一人の3人家族。


しかし夫が痴漢冤罪事件に巻き込まれたことから
幸せな日常の歯車は狂い始める…。



家族3人が、会社・学校・地域とそれぞれ逃げ場がない状況で、無責任な噂に追い詰められ、それが原因でお互いを信じる心すら失って家庭が崩壊してゆく様がこれでもかと描かれる。元々不安や疑心といった人のネガティブな面とか、人がどうしようもない環境で追い詰められてゆく様を描くのが抜群に巧い作者だけに、事態が悪い方へ転がり出した時の圧迫感・気鬱さは半端ではない。しかも誰かの明確な悪意が原因ならば「こいつをなんとかすれば」というストーリー上の解決の道も見えるのに、他人の無責任な噂という実体のないものが原因だけに、解決のために進むべき道すら見えず、負のスパイラルを止める術が見つからないのである。


これが辻村深月とかならまだ最後はハッピーエンドだって安心して読んでいられるけど、刑事もの以外は高確率でバッドエンドで終わる乃南アサだから、どうなってしまうのか本当に予断を許さない。リアルにハラハラしてしまう。読み進めててホンット心臓に悪いというか、鳩尾がグゥゥって下から圧迫される感じだった。


精神的にキツい状態にある人には
読むことはオススメしません。