えだは

モー神通信のTKです。ほんばんは。

『スカイ・クロラ』(ネタバレなし)

押井守監督作品の『スカイ・クロラ』を見てきました。
ネタバレなしで2つだけ注意事項を書くと、



●パンフは結構ネタバレ多いから本編鑑賞前に絶対見ないこと
●スタッフロールで帰るな



んで、とりあえずこれは押井作品の現時点での最高傑作だとは言っていいと思います。『イノセンス』とか商業的には大きな事件だったけど、内容的には「いつもの押井(悪い方)」の一言で済まんではなかったけど、この『スカイ・クロラ』は少なくとも今後評論家気取りで押井監督を語るならば「外しちゃマズいんじゃないの?」とは言われると思いますね。



2000年時点での富野由悠季における『∀ガンダム』に近いかも。ただ『∀』と違って「最高傑作だ!」と「!」付きで言えないのはやっぱ良い原作/良い脚本に恵まれた結果での、良い意味で押井テイストがスポイルされている部分があるからだと思います。アクション指数は下がるパートではストーリーが進み、ストーリーが停滞する部分ではアクション指数が上がるといった風に構成要素がバランス良く配分されていて、これまでの押井作品にあったようなアクションも進展もないかったる〜い時間が少ない。(『AVALON』とかアクションがショボくてストーリーも進まない時間が60分ぐらいあったからなぁ。実は作品的にはその部分が「かったるい時間」として必要だったんだけど、やっぱエンタメ性は下がってしまう)


それでもやっぱ「押井作品最新形」として進化してると感じるのは、誰に向けて送り出すのかっていう設定目標が明確で、これまでの作品でさんざ繰り返されたテーゼでも、一人善がりに陥ってない形で、しかもキャラクターのエモーショナルな盛り上がりとちゃんとリンクする形で提供されているということです。やっぱ何億円出して宣伝されても、人間と人形の境界と対比なんて誰も興味持てないしぃ・・・。あとは今までの押井作品の中ではもっとも恋愛要素に厚みを感じました。



まぁ、深く考えなくても、多分アニメ史上初ってくらいちゃんと描かれたプロペラ機の空戦シーンを見るだけでも十分お値段分の価値はあると思いますよ。飛行機のマニューバをちゃんと理解している人が正確に動きを再現し、しかもそれを最大限魅力的なアングルで見せている。板野サーカスのようなアニメ的機動じゃなくて、プロペラ機の動きって空気を受けるのと切るのが基本だから、すごく体感に心地良いんですよね。美しく、奥行きと解放感のある背景と相まって、ストーリー進展部分で凝った頭をほぐす作用があったと思います。



P.S.
なんか「押井監督はここまで来ちゃったけど、そっちどう?」という若干意地悪な気持ちで『ポニョ』と比較したくなったなー。