えだは

モー神通信のTKです。ほんばんは。

『チームバチスタの栄光』(著:海堂尊)


「特発性拡張型心筋症(バチスタ)」を題材とした医療ミステリー。「バチスタ」と言えばドラマにもなった医療コミック『医龍』を思い出すけど、『医龍』は院内政争をからめた医療ドラマなのに対し、こっちは連続術死の謎に迫るミステリー。 2002年2月初版だけどこっちが元ネタなのかな。器具出し看護師のありようとか、麻酔医の職分とキャラクター性とか、『医龍』が参考にしている部分はかなり多いと思う。


で、内容はさすがに現役医者だけあって、院内独特の雰囲気が描写されてて感心するし、内容も専門的。ただ問題は殺人の内容まで専門的なこと。ミステリーってのはまず不可能状況があって、その死角をついた意外なトリックがあって、さらにその謎を解くことにカタルシスがあるわけですけど、内容が専門的なせいで、その不可能状況がどれくらい不可能なのかも、トリックがどれくらい意外なのかもピンとこないんですよね。登場人物が「その手があったか」的に驚いているから間接的には伝わるんだけど。


それでもグングン読めてしまうのは、ひとえにに探偵役の「ロジカル・モンスター」こと白鳥圭輔の傍若無人なキャラクター性と容疑者への尋問が面白いから。ズカズカと相手の領域を蹂躙し、怒らせ、翻弄し、時に相手に自分を殴らせまでして、そのスキをついてちゃっかり知りたい情報は拾って行く。その心理アプローチの仕方が、普段 相手に気を遣ってもなかなかその心情を読み取ることができない私たちにとっては、読んでいて痛快なんですね。


次の作品『ナイチンゲールの沈黙』も買ってみよう。