えだは

モー神通信のTKです。ほんばんは。

読了


『スメラギの国』 朱川湊人文藝春秋

タイトルを見て「すわ右寄りの話なのか!?」と思うかもしれないけどここで言う「スメラギ」とは劇中に登場するある猫の名前。


恋人の結婚を控えて新居に引っ越した志郎は、些細な事故から子猫を轢き殺してしまう。その子猫は周囲の猫を束ねる特殊な能力をもった猫たちの王の子供であった。その日から、志郎は恐ろしい事態に巻き込まれていくことに…


……と書くとホラーなんだけど、いや、確かに怖い描写もあるんだけど、壊れていく日常に対して足掻く主人公の心情だったり、親子の情愛といった部分がメインテーマである。描かれている恐怖というのも、単純にお化けや幽霊が怖いというのではなくて、守りたいものや当たり前の日常が非日常的なものによって壊れることへの恐怖。その対比があるからこそ、そこにある日常が家族がかけがえのないものとして心に染み入る。