えだは

モー神通信のTKです。ほんばんは。

読了


『カルプス・アルピス』 嶽本野ばら小学館 ★★
魂の物語に偏重し過ぎた結果、記憶喪失とか二重人格とか、表層事象としては荒唐無稽になってしまった気がする。けど、あとがきでこの本が出版された経緯を読むとそれも致し方なしというか、こういう形態でないとそもそも書かれる意義がない作品なのだということは理解した。



『鱗姫』 嶽本野ばら小学館文庫)★★★
天上天下唯我独尊。美肌にこだわりまくり、世間の常識なんぞ鼻にもかけない不遜なお嬢様が謎の奇病に侵されて……。
嶽本野ばらの作品は登場人物の美意識を中核とするところは共通なんだけど、『エミリー』とか『世界の終わりという名の雑貨店』のような永遠を描こうとする方向性と、『下妻物語』みたいなコミカルな方向性に分かれると思うんですけど、これはコミカル寄りの方。ただヤンキーちゃんの存在で相対化される分、やっぱり『下妻物語』の方がわかりやすいし、楽しい。とことん不遜なお嬢様の暴走具合は楽しいし、お耽美な話も嫌いじゃないんだけど、どうしても閉じた世界だけで物語が紡がれるとドラマ性に欠けるというか。



下妻物語 ヤンキーちゃんとロリータちゃん』 嶽本野ばら小学館文庫)★★★★
以前にも1回読んでたんですけど、その時は映画を見た直後で「映画の原作を読む」という視点だったんで、今回は改めて野ばら作品という視点で。典型的な、違う者同士だからこそわかり合える(ガシッ!)というガール・ミーツ・ガールもの。性根は腐ってるけど自分の筋だけは通すロリータちゃんがとにかく痛快で。ストーリー的にも山あり谷あり、娯楽性バツグンで、やっぱりこういう風に「面白い」に振り切って手を尽くした作品の方が好きです。