えだは

モー神通信のTKです。ほんばんは。

読了

『きみの友達』重松清 新潮文庫) ★★★★


交通事故で足に障害を負った恵美と、腎臓が生まれつき悪く入退院を繰り返す由香。二人の少女と、その周囲の子供たちの物語が大人の第三者の語りで紹介される。クラスの人気者、そのライバル、ムードメーカー、はじかれることを恐れお調子者を演じる八方美人、自分で言い出した行事を重荷に感じて悩む子、良い所のない劣等生。いろんな立場の子の、日々のサバイバル。


教室という逃げ場のない閉塞した社会だからこそ、そこでの人間関係は子供たちにとっては大人が考える以上に切実な問題だ。教室の中で、浮かないこと、弾かれないこと、埋没しないこと、どれも難しい。嫉妬や劣等感といったネガティブな感情をうまく処理できない子も多い。そんな中で恵美と由香は「みんな」の輪の中に入らずに二人だけで過ごすはぐれた存在。そんな二人と何かの拍子に関わることで、他の子たちも自分を相対化して見つめる機会を得る。それにどれほその意味があったのかはわからない。ただ、そこに何かしらの意味があって欲しいという語り手の願いは静かに伝わってくる。