えだは

モー神通信のTKです。ほんばんは。

読了

『無音潜航』(池上司:角川文庫)
北朝鮮工作員によるテロを発端として極東に緊張が高まる中、中国からの帰途につく途上で遭難者を救助した海自の通常潜水艦「さちしお」は、北朝鮮と中国海軍から突如攻撃を受ける。なんとか海上戦力を撒いたさちしおだったが、その背後には中国海軍の原子力潜水艦「四〇五」が迫っていた。果たしてこの追撃を逃れることはできるのか? 


決して先制攻撃ができず、原子力も搭載できないという政治的ハンデを背負った上での海自潜水艦の頭脳戦。基本的に視界0でソナーだけが頼りの潜水艦戦闘は、操艦能力よりも、互いの位置を知り、その意図を探るかけ引きが重要な意味を持ってくる。そういう意味では実に小説向きの題材と言えよう。戦闘時には通信ができないため(相手に艦の位置がバレるから)、すべての裁量権が艦長に委ねられるという独立性も、物語を描く上では状況を簡潔にし、さらに個人の意志や心情にクローズアップしやすい構造を生む。潜水艦ものに外れが少ないのはこうした理由からだと思う。


ちなみに、この話の中では中国側にも直接攻撃ができない事情があったため互角のかけ引きを演じていたが、これが実際の戦闘だったら早々に魚雷を撃たれて撃沈されていたような気もする。原子力なぁ・・・。