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『馬超』(風野真知雄 PHP文庫)

三国志』の英雄の一人、流浪の豪将・馬超の生涯を描いた小説。中国の北西・涼州曹操軍に対し叛乱に立ち上がるも、そのせいで血縁者の多くを失い、結局は敗残して蜀の国に流れ着いて劉備の下で五虎将軍の一人に任じられれる馬超。基本は史実ベースで、正史に記載されているエピソードは一通りカバーされている。なので彼の人生をザッと追うには最適の一冊。


「〜した。〜した。」というブツ切り感がある文体は決して良文とは言えないのだろうけど、そのそっけ無さが岩と砂の荒野が広がる涼州を想起させ、逆に味わいとなっていたと思う。これが湿潤な江東地方の話とかだと全然合わないのだろうけど。


叛乱を起こしたことで人質となっていた父・騰と弟の鉄・休を殺され、乱の過程で妻子も殺されてしまう。蜀に逃れるも、恨みある曹操と戦う機会は結局得られなかった・・・。


馬超に関しては、「錦」と謳われたその武勇とは裏腹に、どうも蜀に彼の心休まる場所があったとは思えなくて、なんとなく切ない気持ちにさせられる人物という印象を持っていたわけだけど、この小説では、幼少の頃の創作エピソードなどを交えつつ、前述の印象をより際立たせる方向で書かれている。といっても叙情的な描写が多いわけではなく、なんとなく前述の湿度の低い文体でそっけ無く描かれる後半の半生が、馬超の背中に漂う乾いた寂寥感を感じさせるのだ。