えだは

モー神通信のTKです。ほんばんは。

『SEXY BOY〜そよ風に寄り添って〜』 in POP-JAM

先日の『POP-JAM』での歌披露がモーサイト界隈では随分と不評のようです。確かに、あからさまに口パクであったことや、キモとなる合いの手を含むバックトラックの音量が小さくてなんだか淋しかったこともあって、正直あまりに微妙な出来だと感じました。コンサートではもう少しマシなんですよ、と擁護しつつもやっぱり今回の振り付けは感心しないというのが私の感想です。



今回のパフォーマンスの弱点は「対比が不明瞭」という一点に尽きます。この曲のイントロは音数が少ない「静」 から始まって徐々に音数を増やし、つんく♂のかけ声と共に一気に 「動」へ移行する構造になっています。本来ならばこの転換の瞬間にカタルシスを感じ、一気にテンションが上がるわけですね。例えば同じような構造を持つ『色っぽい、じれったい』では、同じく冒頭にネタ(セリフ)が入っていても、静止状態から一気に弾けるという部分では、振り付けと曲調がきちんと連動していています。ですがこの新曲の場合は、「静」であるハズの部分に最初のカメラを覗き込むような小芝居(ネタ)で半端に動きが入ることによって、その静と動の対比が曖昧になっています。また「動」に入ってからの動きも、フリが小さく思い切りに欠け、静との対比が不明瞭なように感じました。せっかくつんく♂ちゃんが勢い良く叫んでるのにさ。



また、この曲は基本のメロディラインは、80年代のロボットアニメOPのように、大仰なくらいにシリアスです。その合間に「巷で噂のセクシーうぇ↑うぇ↑」というコミカルな合いの手が挿入されており、音源を聴いた限りではその対比が面白いと感じていました。だけど同じ衣装を着たメンバーのほとんどが振り付けをユニゾンで行なっていることで、このシリアス−コミカルの対比も不明瞭になっていたように感じました。私は衣装は2種類に分けて主旋律を歌う人と「うぇ↑うぇ↑」ギミックを入れる人との対比を視覚的に強調した方が良かったように思います。



これら2つの音源から想定されるあるべき対比が不明瞭になっていることで、メリハリなくダラダラと続いているように感じるんですね。ちなみにPVも全体のダンスシーンも顔アップもすべて白背景で、対比がなく漫然とした映像に仕上がってるように思いました。まぁ、そのダラダラ感こそパラパラの真髄なのかもしれませんけどね。





また先日、私は辻ちゃんの話題の際に、

視聴者に安心感を与えるためには周囲から「どういう扱われ方をされる存在であるか」ということが確定していることが重要

であると述べましたが、これと似たような意味でも、冒頭の小芝居は微妙だと思います。ここは歌詞の「噂のSEXY BOY」という部分とひっかけて、噂の彼を覗き込んでいる芝居なのでしょうが、このイントロの時点ではまだその歌詞は登場してないのです。ですから間奏の部分でやるならまだしも、冒頭でこれをやっても見ている人にはひたすら意味不明なんですよ。よって視聴者はこれをどう受け止めていいのかわかりませんから、見ていてなんだか居心地の悪い思いがするのです。






あとこれは今回のツアーに対する感想にも通じるところがあるのですが、この曲の振り付けは、今のモーニング娘。にとっては、ちょっと設定目標としては易し過ぎるんですよね。ツアーも割と簡易な振り付けの曲や振りのないバラードなどが頻繁に挿入されていて、地力を上げた彼女たちにとっては全力限界まで出す必要はないんですよ。例えば今の高橋なんかだと、全演目を全力の8割の力でこなせてしまうような気がします。ハードな目標に対してひたむきに取り組み、自分の実力以上の力を引き出す瞬間にこそ発する彼女たちの輝きを求めている者としては、そのへんが物足りないのです。





今回は曲としては久しぶりに楽しみにできるクオリティだと感じていただけに、この振り付けはちと残念なのでした。