えだは

モー神通信のTKです。ほんばんは。

エヴァ立体商品今昔

テレビが放送されていた12年前と現在とを比べて、周辺環境で大きく変わった点としては、ネットが格段に普及・浸透したことが挙げられるのでしょうが、商品環境的には関連立体商品が塗装済み完成品アイテムで発売されていることが一つの変化として挙げられるでしょう。


12年前のテレビ放送時は『エヴァ』に関する立体物では「ガレージキット(以下:GK)」と言われる形態が隆盛を誇っていました。ごく簡単に言うと、GKというのは、造形師が作ったワンオフの原型を型取りして「ゴム型」を作り、そのゴムでできた凹型に「レジン」と言われる合成樹脂を流し込んで固めて製作した立体物のことです。ゴム型の柔軟性から原型の再現性が高いこと、何千万とかかる金型を製作するのに比べてはるかに安く作れることがメリットなのですが、ゴム型自体は脆く、大量生産はできないというデメリットがあります。一般に目にする立体商品の多くは、丈夫な「金型」を使って生産されれているため、大量生産が可能で、作れば作るほど金型代の原価償却ができて小売単価は安く抑えられます。逆にそれができないゴム型では、どれだけ生産しようが単価は安くできません。さらにGKは商品を組み上げ、塗装するのに相当の技術が必要でもあり、ユーザーを選ぶ商材であります。



つまり本来的にはGKは商売としては成立しづらいジャンルであり、その市場規模には限界があるのです。必然、作り手もプロの造形家でありながらも商売気が多い人は少なく、「二次創作に励むファン」という側面も色濃く持っていました。実際、初期投資が安価で済むこともあって、プロではない造形家が一日だけ版権が許諾されるワンダーフェスティバルなどのイベントに参加して、GK商品という形で自己の作品を発表するということも一大ブームとなったのです。



元々オタクサークルを出発点とするガイナックス作品である『エヴァ』と、ファン活動的側面を強く持つGKという商品形態は親和性が高く(いわゆる「シンクロ率が高い」ってヤツ)、『エヴァ』放送後は“エヴァ・バブル”と言ってもいいほど、多くのGK商品が世に出回ることになったのです。中途半端に放り出されたテレビ版最終回によるファンの「飢え」も、これに拍車をかけることになりました。映画版『The End of〜』でファンが補完された後も、変わらず『エヴァ』はGK界において強力なコンテンツではあり続けたのですが、やはりバブルは弾ける運命にありました。GKの市場規模そのものが縮小へと向かっていったのです。


その一番の原因は、完成品アイテムの高品質化でしょう。GK隆盛の間、それを横目に大手トイメーカーとて手をこまねいていたわけではありません。時には直接的にGK造形家をトイ原型師として招聘し、あるいは海外の生産工場と折衝を重ね、GK的な造形へのこだわりを大量生産商品に取り込む企業努力を続けていたのです。


逆に海洋堂を始めとするオタクマインドを持つGKメーカーが、大手トイメーカーと提携したり、自ら大量生産アイテムを手がけるようになることも定番の流れとなりました。


結果として、かつてのGKのようなオタク的こだわりや作家性を反映された高品質な立体物が、塗装済み完成品アイテムとして世に出回るようになったのです。 もちろん、造形の再現性という点ではまだGKに分があったのですが、その差は確実に縮まり、GKが作るのに大変な手間と技術を要することもあって、多くのユーザーは完成品アイテムに流れることとなりました。結果としてGKは衰退した・・・というか『エヴァ』以前の適正な規模に戻っていったのです。


映画を見て高まれば、すぐにバンダイ海洋堂のプラモデルや完成品アイテムを買うことができる。12年前と今とで、周辺環境としてはこれは一つの大きな変化で、公開劇場でリボルテック(※)のエヴァが買えることはその象徴に思えるのでした。



※)リボルテック・・・海洋堂が発売する塗装済み完成品アイテム(公式