マーベル映画究極批評
■マーベル映画究極批評 アベンジャーズはいかにして世界を征服したのか?
(てらさわホーク著、イースト・ブレス刊)
あくまで映画批評が中心で、図版やスチールの使用は一切ないため、いわゆるアメコミユーザーに向けたファン書籍ではありません。
原作コミック、公開当時の記事やキャストのメディア上での発言、スタッフ・製作陣のキャリア解説、オーディオコメンタリー、背景となる(主にアメリカの)社会情勢など、メディアの海に漂う情報を拾いつつ、でもそれらをオタク的に網羅するのではなく、あくまで映画評論としての切り口を明瞭化するために取捨選択して提示する編集スタイルと語り口がスムーズ。
評論においては、長期シリーズのブリッジとしての機能や、どれだけキャラクターに寄り添えていたかなどにも言及し、映画単体としての完成度だけでは断じることができないMCU作品ならではの魅力を掬いあげています。
『キャプテン・マーベル』まで21作のMCU映画を1本1本個別に評論しつつも、読み進めるうちにその総体として10年間におよぶマーベル・スタジオ通史が大河ドラマとして立ち上がって来ます。それはあたかも単品映画を積み重ねて壮大なインフィニティ・サーガを創り出したMCUのようでもありました。
図版を使用せず、権利元と距離を置いたいわゆる非公式本だからこそ、『リミックス』や『バトルロイヤル』といった馬鹿げた邦題改変にも苦言を呈していて好感が持てます。(できれば吹き替えキャストの出来にも言及して欲しかったところ)