えだは

モー神通信のTKです。ほんばんは。

好きも悲しき『BRAND NEW MORNING』

アイドルグループの「歴史」を前に押し進めるのはシングル曲のリリースである−−。


と大上段に始めましたが、少なくとも今まではそうだったと思うんですよ。特に増員と卒業を繰り返すモーニング娘。においては、どれだけこのままでいて欲しいと願っても、新しいメンバーでのシングルがリリースされることで新しい体制が始動する/否が応にも始動してしまう、そういう面があったと思っています。そうやって楽曲とグループの時勢を紐づけて長年モーニング娘。を眺めていた私ですが、最近はEDM曲が量産されたこと、そして両A面/トリプルA面が連続したこともあって、どの曲とどの曲がセットなのか、どの曲がどのタイミングでリリースされたかの認識がかなり曖昧になってしまっていたんです。言ってしまえばそれは「歴史」観の散逸であり「物語」の喪失です。ですからそんな自分に対し危機感を抱き、また寂しい想いも抱いていたのでした。そうした中で今年にリリースされたのがこの『BRAND NEW MORNING』です。


ですから私がこの曲でまずは嬉しかったのは、「13期加入曲」という押し出しが明確であることでした。今というタイミングを同定し、涙もろい苦節の人・加賀楓と笑顔のルーキー・横山玲奈。対照的な2人を迎え入れた新体制を「新しいモーニング娘。」として打ち出した曲。真紅の錦旗の下、儀仗兵のごとき衣装に身を包んで行軍し自らを鼓舞するアジテーションソング。新メンバーの加入を言祝ぎ、その慶事をグループの推進力に変換せんとする、曲に込められた意図は明快。私はそれに高揚しました。要は「アガがった」んですね。


スルメ曲度合には『ジェラシー ジェラシー』に分があり、私も最終的にはそっちの方が回数は聴いてはいるのですが、やっぱり従来的には初週のオリコン順位などを以てお茶の間にコミットする使命を持つシングル曲ですから、瞬発力 = ルックスを含めた初聴でのキャッチーさというのも重要な要素。この対外的キャッチーさと、グループの歴史の道標という二つを以て、『BRAND NEW MORNING』は私がシングル曲に求める役割を十全に果たしていると感じました。


ちなみにアップアップガールズ(仮)などにはよく見られるこうした「自己言及ソング」ですが、意外とこれまでモーニング娘。にはありませんでしたね(『本気で熱いテーマソング』ぐらい?)。そこには何らかのつんく♂さんなりの線引きがあったのかもしれません。そうした意味でも、非つんく♂曲らしい踏み込みでもあり、新鮮ではありました。


そんな風にしてお気に入りとなったこの曲ですが、喉に刺さった骨のように気になるフレーズが一つ。
誰よりも「最強」!
これです。


まずダサい。これなら適当なJ-POP英語の方がなんぼか良かったような。「The BRAND NEW MORNING is rising NOW!」とかなんとか。


そしてファンの心性に微妙にそぐわない。「強い」という指標、それも「誰よりも」という他者との比較において成立する指標が、ことアイドルファンの心性にはベストマッチ!とはいかないわけです(所謂「イキリオタク」の人なんかは合いそうな気もしますが…)。世間的には『ふるさと』よりも『LOVEマシーン』の方が“強い”わけですが、「『ふるさと』も良い曲なんだよね」と言いたいのがファンというもの。2番の“今よりも最高”にしても、歌割が増えた生田を称賛しつつも、「る」の一文字に賭ける姿もまた愛おしいと思い、それに寄り添うのがヲタというものです。そういったファン心理との齟齬がある中で、まさにBメロからサビへと移行する要石の部分にこのフレーズがあることで、微妙な躓きを感じ、ギアがトップに至らない−−。惜しい。



そしてこの曲が真に残念なのはリリースの後の取り扱いにあります。不可解なカントリー・ガールズへの措置と森戸さんのモーニング娘。への移籍加入により13期の新メン期間はなし崩し的に終了を迎え、この曲が幻視せしめた「新しいモーニング娘。」の快進撃も画餅へと帰してしまいました。この秋のツアーでは「工藤卒業」と「モーニング娘。20周年」に重心を置くあまり、コンサートで披露されないという有様です。『若いんだし』リリース前のツアー開始時点では直近のシングルであるにも関わらず! ひどいよ!



そうした不憫さもありつつですが、やはり私は13期のデビュー曲であるこの『BRAND NEW MORNING』が愛おしい。ハロプロ楽曲大賞では『ジェラシー ジェラシー』の方を上に入れてしまいそうなので(スマヌ…)、自分の中のこの曲への愛情の供養の意味も込めて、書き残しておきました。