えだは

モー神通信のTKです。ほんばんは。

映画:ピンクとグレー

原作はアイドルグループNEWSの一員である加藤シゲアキによる処女小説。ジャニーズ事務所に所属するアイドルが執筆した小説として話題になった一冊です。私も映画鑑賞前にこれを読んでいたのですが、作家デビュー作とあって随所に粗削りな部分も見受けられましたし、登場人物の行動にかなり納得しづらい部分もあったりしたのですが、少なくともその感性はフレッシュなものがあると感じましたし、何よりタレントが「ちょっとキャリアのネタとして小説っぽいものを書いてみました」というのではない、「こいつは書き続ける人だ」と納得させてくれるだけの熱量を感じました。


で、映画の方はどうだったかと言いますと…う〜ん、なんですよねぇ。渋谷を舞台にした若者向け映画なのになんなんだこのダサさは! 先にも述べたように「感性のフレッシュさ」こそが原作の肝の一つだと思うんですけど、ジャニーズタレント原作で話題性充分、大ヒットも見込める(=失敗はできない)となると、どうしてもある程度実績のある手堅い人に任せることになるでしょう。実際に監督となったのは『世界の中心で、愛を叫ぶ』の行定勲監督。アラフィフというのは日本の映画監督としては若い方でしょうが、そもそも日本の映画界はメガホンを握れるまで時間がかかり過ぎる仕組みですからね。それでも作品の特性に合わせて寄せてくれてればよかったんですが、どうもフラフラ揺れるカメラの演出法といい、つけられた演技の方向性といい、一時代古いものに思えてならなかったのです。特にラストシーンでの主人公のとある行動とか、それこそハロプロのMVで「青春映画っぽい行動」のパロディとして取り入れられてることを真っ向からやってたりするので、それはいくらなんでも青春表現として手垢がつき過ぎだろうと。


鮮度が無理ならばせめて原作の熱量だけでも汲み取ってくれてればと願ったのですが、そう信じるのを阻害するのが、ディテールの作り込みの甘さ。例えば劇中で映るインタビュー番組とか雑誌のポスターといった諸々が、今時そんな貧相な絵作りしないでしょ、っていうレベルなんですよね。使ってるフォントもダサいし。あれは本職のデザイナーや映像ディレクターに発注したんじゃなくて、映画の美術スタッフが作ったんでしょうね。「神は細部に宿る」と申しますが、やっぱりこういう部分が甘いと製作への熱意は信じられなくなります。『マッドマックス』で小道具一つが何よりも雄弁にあの世界観を説明してくれていたように、ルックスは大切ですよ。



構成的には原作からの改変はヒネリが効いてて悪くなかった(『シックスセンス』以降叙述トリックを疑いながら見るクセがついているせいですぐに予想はついたけど)のですが、総じて映画オリジナルの追加要素が薄っぺらい。もうこの時代に、登場人物に「狂気の高笑い」をさせておけばその動機も感情線も説明せずに放りっぱなしでもいいとは思わないでほしいのです。ドラマの盛り上がりとしてキャラクターが大声を出して組み合ってるシーンを入れておけばクライマックスっぽくに見えるだろっていう浅い姿勢が見えてしまうんです。というか全体にオリジナル部分は、「それっぽい」シーンを入れて何かを語った気になってる部分が多い。もう少し「物語り」に真摯に臨んで欲しいなと。


でも若い俳優陣、特に夏帆さんと「鬼ちゃん」こと菅田将暉は良かったです。ただやっぱり菅田君の『そこのみにて光輝く』の鬼気迫る名演と比べると、つけられた演出がダサかったんだろうなぁ〜と邪推はしてしまいました。