リアル・ワード

「本当の言葉」を手に入れること。それは私の人生における究極の目標の一つです。「本当の言葉」とは何か？　それはその言葉を使えば自分の考えていること／感じていることが少しも損なわれることなくそのまんまの形と熱量で相手に伝わる言葉のことです。私はそれに辿り着くことを自分の人生のグランド・クエストに設定しています。夢物語のようですが、出版とかに関わっている人は皆、そんな夢を心の片隅に持っているものじゃないですかね。キザな言い方をすればそれは実在するかどうかもわからない伝説の剣を探す冒険の旅ようなもの。業界の人は広い意味でその冒険を共にする同志だと思っています。

だけど現実は時間や文字数や自分の能力という限界に縛られ、日々の仕事の中で「本当の言葉」に辿り着くことなんてまずありません。それを模索する余裕すらありません。サイトは文字数制限なしで書けますが、それでも10年近く書き続けて来て「本当の言葉」に近づけたかもと思えたことなんて１回か２回でした。言いたいことが７割も表現できればいい方で、感じていることと伝わる内容が微妙にズレていると感じながら世に送り出すことがほとんど。世に溢れたありきたりの言葉をつなぎ合わせて体裁を整えるのが精一杯だったりするのです。もちろんありきたりの言葉の中からできるだけ最適な組み合わせを模索はしますけど。

だから香音ちゃんのこの更新の「ファンの方のファンです」という言葉を見て胸を衝かれました。

「ファンの皆が大好きです」、「いつも応援ありがとうございます」
そういう言葉を先輩メンバーも皆使っているし、それは正しい解答でしょう。普通ならそれで十分なハズなんです。だけど香音ちゃんはそれで良しとしなかった。その表現じゃあ自分の感じていることの幾らかを取り零す事になると思った。だから自分の気持ちに向き合って、なんとかそれを伝え得るものを探して、「ファンの方のファンです」という言葉を見つけ出した。その姿勢は素晴らしいと思うのです。

どれだけ年下だろうが関係ない。
私は香音ちゃんを尊敬します。