読了

　
『虚貌』　（ 雫井 脩介：幻冬舎）
悪くなかったんだけど、やっぱり賛否あったようにミステリとしては実現可能性の問題はひっかかりますね。「ミステリとしての色が薄くて人間を描いた作品」っていうのならまだ良かったんですけど、中盤までの犯行とアリイバイの不一致から「何か一つブレイクスルーがあればこの謎が解けるのに！」という盛り上げが下手にうまくいってただけに、その解決編での実現可能性の問題でガクッときちゃった。扱ってる事件の内容事態は凄惨でセンセーショナルだけど、それを露悪的に見せる姿勢はなくて、そういう点では好感が持てたし落ち着いて読むことはできました。

『ヒトリシズカ』　（誉田哲也：双葉社）
そろそろ女性が幸せになるほんわかした話が読みたいなぁと思ってたんですけど、第一話からして、女子中学生が襲われ、写真撮られ、売春させられ…という悲惨な展開ですっかり憂鬱に

−−と思ったら、読み進めるうちに事件は違う顔を見せ始める。彼女は本当に被害者であったのか？　男に近づいた不可解な動機、一見バラバラに見えるいくつかの事件の影に浮かぶ共通する影、そして彼女を捜索した者に訪れる不自然な死…。

事件の影に見え隠れする少女を追っているうちに、浮かび上がる一人のダークヒロイン像。彼女が被害者なのか、加害者なのか、読み終わった後も定かではないけど、その人生を追いたいと思わせるような、魅力的なキャラクター像であったことは間違いありません。そしてそれは、厚みをもって描かれる彼女の父親に近い年代の警察官たちとの対比の中で描かれていたからこそ、より魅力的に見えたのでしょう。