理不尽と性表現規制
思えば、非実在青年がどうのという都の条例も、一部のファシストを除けば、大多数の人にとっては理不尽に対抗しようとしたものだったのだろう。愛する幼子が変態の毒牙にかかり一生消えない傷を負う。そんな理不尽の存在を認めては誰も安心して生きてはいけない。残念ながら、普通の人間の中に一定の割合で欲望を制御できない人間が存在するのと同様に、幼女愛好者の中にも欲望を制御できない人間は存在する。そういう人間に誰かが犠牲になるのは理不尽そのものだ。
社会はそんな理不尽に耐えきれないので、何か自分でも理解できるわかりやすい原因と結果の物語を求めたがる。これが襲われたのが成人女性だったら、「女の側にも隙があったから」とか「お前が誘ったんだろう」という風に被害者の側に原因を求める声にもなる。だけど幼女の場合は被害者に原因を求めるわけにはいかないから、「こんな怪物が生まれたのは●●のせいだ」という風に自分が納得しやすい物語を創作したがるのだ。
「エロマンガのせいで児童に対する性犯罪が発生する」
そうであればいい。本当にエロマンガを規制したら幼女の被害がなくなるなら、どれだけ素晴らしいことか。だけど残念ながら現実はそうじゃない。どれだけ社会が発達しようとも理不尽は理不尽として存在するのだ。無理やり原因を作り上げて、それを批判しても、対処したことにはならないのである。本当に児童たちの安全を考えるなら、つまらない議論に時間と予算を遣うよりも、現実的にすることがあるだろう。
少なくともエロマンガと性犯罪の相関関係を示すデータはない。わかりやすい原因がない、それは未然に防ぐことが難しいということでもある。私は児童に対する性犯罪の発生率を下げるために、現状で有効な対処法は「再犯を防ぐ」ということしかないと思っている。誰が犯罪予備軍かわからないなら、せめてそういう資質を持っていると判明した者の監視を密にし、犯罪の発生を防ぐのだ。
行政には「自分が納得するための物語」ではなく、
現実的な犯罪予防措置を求む。