えだは

モー神通信のTKです。ほんばんは。

読了

『蒲生邸事件』 宮部みゆき毎日新聞社
陸軍大将・蒲生憲之邸宅跡に建つ東京のホテルに、受験のために泊っていた孝史は、そこで火災に巻き込まれる。時間旅行能力を持つ平田と名乗る男に助けられて別の時代に逃れることとなるのだが、そこは二・二六事件当日の元陸軍大将の邸宅であった。


蒲生大将はクーデターの勃発を知って自決する。しかし自殺現場からは使用されたハズの拳銃が消えていた。外はクーデターで人の出入りは不可能。果たして事件の真相は? そして現代の青年が見たこの時代とは


いい話なんだけど、
買いにくい本、売りにくい本ではあると思った。


タイムトラベルもののSFとして入り組んだ凝った内容ではない。
超常要素があるから殺人事件を扱ったミステリとしては成立しない。
歴史ものとしては主人公のトリップした時代への関与が薄い。
時空を超えた恋愛ものとするには人間関係が希薄。


要するにどのジャンルにもしっくり収まらないのだ。
火車』のような「ジャンルを超えた名作」というのはあくまで土台となるジャンルでのニーズを満たした上で、その文学的価値を認められて成立するもので、最初からその軸足がカテゴライズされにくい作品はまずもって手に取られることが難しい。