えだは

モー神通信のTKです。ほんばんは。

読了

『ホルモー六景』 万城目学角川書店

前作『鴨川ホルモー』は、普通の人には見えない“鬼”を使役して京都の4大学が対抗戦を行う不思議な競技「ホルモー」を題材とした小説でした。今回の『六景』は、その『鴨川ホルモー』からスピンオフした6編の短編集です。前作の主要キャラクターの日常や、参加していて別チームのメンバー、果ては遠く別時代のホルモーまで、作品世界に広く題材を取っています。


それを読んで改めて思うのは、この物語世界の主役が京都という舞台そのものであったということ。繁華街のスキ間にひょいと数百年前の史跡が顔を覗かせるという、日常と歴史の境目が曖昧な京都というロケーションだからこそ、このちょっと不可思議な話が、大袈裟なリアクションなしに、韜晦気味に語られることに違和感を感じずに済むのでしょう。


それは『夜は短し歩けよ乙女』にも言えること。そしてもう一つ両方に共通するのは、その割には京都の景観や雰囲気といったものに対する描写が少ないということです。ですから地名がたくさん出てきて京都を知っている人間にはその景色がありありと浮かぶのですが、そうじゃない人にはイメージが掴みづらいのかも。でも、こればっかりは京都という街の雰囲気をその肌で知ってもらうしかないということなのかも。自分が長々と文字数を費やすよりも一度京都へおいでやすという、作者のスタンスなのかもしれません。文藝としての普遍性を求めるしゃちほこばった姿勢なんか、悠久の都には似合いませんしね。