えだは

モー神通信のTKです。ほんばんは。

『スロウハイツの神様』 (辻村深月)

「人生って素晴らしい」。ある瞬間に人を満たした希望の光。人はその一瞬の光を信じた自分に殉じることで、その後の長い一生を生かされる。そういう普遍に触れる話だった。


一つ屋根の下に集ったクリエイターたちが、情熱を胸に、互いの存在に励まされ合って過ごす眩しい季節。本章で描かれるその夢のような時間のすべてが、最終章で明かされるあるささやかな光を原泉としている。その光に殉じようとした人に、すべての夢と愛しさが守られていたのだと知る。そのことに、人間のいじらしさと素晴らしさを感じずにはいられない。


本章で描かれる充実した季節だが、そこに甘い姿をした悪意を一点混入させることで、その眩さを実に効果的に引き立たせている。